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2019.07.01

伝統的なモチーフのリデザインにチャレンジする。 「めぐるのれん展」ローンチイベントトークセッションレポート

伝統的なモチーフのリデザインにチャレンジする。 「めぐるのれん展」ローンチイベントトークセッションレポート

今秋、日本橋に存在する歴史的なモチーフや文化を新たな目線でアップデートすることをテーマに、「NIHONBASHI MEGURU FES」が初開催されます。そのメインコンテンとして展開される「めぐるのれん展」は、「のれん」という日本橋らしい伝統的なモチーフを舞台に、様々なクリエイターが「日本橋の街」や「日本橋の企業」を表現するデザインイベントです。オリジナルの暖簾作品を全長150メートルにわたって掲出し、魚河岸があったころの日本橋の街並みや賑わいを現代に再現します。

この「めぐるのれん展」の暖簾作品を制作する、日本橋企業、ゲストクリエイター、そしてデザインコンペ枠への応募を検討されている若手デザイナーを迎え、6月5日にローンチイベントが行われました。今回は、参加者からも好評いただいたゲスト審査員によるトークセッションの様子をダイジェストでお届けします。

いま「のれん」をデザインするということの意味とは?

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トークセッションのモデレーターを務めた、株式会社バスキュール代表の朴正義さん

朴正義さん(以下、朴): 本日はお集まりいただきありがとうございます。まず最初に「いま『のれん』をデザインすること」というテーマについて、お話していきたいと思います。まず皆さんにお尋ねしたいのが「暖簾をデザインしたことありますか?」ということ。今日は昔から日本橋を支えてきた企業や店舗、若手デザイナーの方々にお集まりいただきましたが、ほとんどの場合において経験されたことがないと思うんですね。

「暖簾というモチーフを舞台に、自社のアイデンティティをどう表現すべきなのか?」というようなことを、参加企業のみなさん、それぞれに考えられているのではないかと思います。クリエイターの方も「何を取っ掛かりにして、暖簾を制作したらいいか?」と悩まれているかもしれません。なので今日は、なぜ今暖簾をデザインするのか、どんなアプローチがあるのかということを皆さんと共有できればと思っています。最初に、今日会場にも展示されている素敵な麒麟の暖簾を作っていただいた波戸場さんからお話いただけますか?

直接的な表現と「削ぎ落した」表現。2側面ある「紋」のアプローチ。

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紋章上繪師の波戸場承龍さん(左)、耀次さん(右)

波戸場承龍さん(以下、承龍): 初めまして、紋章上繪師(もんしょううわえし・紋を着物に手描きで描き入れる職人のこと)の波戸場承龍と申します。僕は「紋」というアプローチについてお話させていただきたいのですが、紋には直接的に表現する手法と、極限まで形を削ぎ落としてそこに意味を持たせる手法と、2つがあるんですね。ちょうど日本橋に実際かかっている暖簾が参考になるのでこちらで説明させてください。

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「ECO EDO 日本橋 アートアクアリウム」の金魚の紋(2012年)

承龍 : 2012年に、「ECO EDO 日本橋 アートアクアリウム」の金魚の紋を作らせていただきました。これは金魚鉢を上から見たところに土佐金を入れたという、見たままの形を表した紋になります。これが先ほど申し上げた、直接的な表現のアプローチです。

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各ビルの暖簾の紋デザイン。COREDO室町1(下段左)とCOREDO室町2(下段中央)は波戸場さんが手がける

承龍 : またこちらは2014年、商業施設COREDOの暖簾デザインを担当させていただいたときの紋です。COREDO日本橋と日本橋三井タワーはクリエイティブディレクターの近衛忠大さん、COREDO室町1・2は僕、COREDO室町3は江戸時代の紋章上繪師によるデザインです。

COREDO室町1はテーマが「栄(さかえ)」ということだったので、おめでたい熨斗紋(のしもん)のデザインを考えました。下の結びの部分はCOREDOのOのデザインにもなっている道路元標の形を示しています。それから、この企画全体のキーワードである「五街道(の起点である日本橋)」を、“西に3、東に2”で表現しました。

一方COREDO室町2のテーマは「楽(たのしむ)」だったので、日本橋が昔は文化の中心だったことから、歌舞伎の市川家の家紋である「三枡」を、これも五街道にちなんで「五枡」にして、さらに天を突き抜けることでおめでたさを表現した紋になります。これはどちらも形をそぎ落とした表現ですね。

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江戸時代の庶民に幅広く親しまれた、絵を読み解いて答えを導き出す「判じ絵」

承龍 : こんな考え方や表現もあるよ、ということをお示しするために続いてこちらを紹介します。これは「判じ絵」という江戸時代に用いられた “なぞなぞ”みたいなものす。左から目白(めじろ)、真ん中が駒形(こまがた)、右が日本橋(にほんばし)ですが、判じ絵的な要素を紋の中に組み込んで作ってみるというやり方もあります。

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2019年秋にオープンする、COREDO室町テラスの紋

承龍 : その表現のひとつが、2019年秋にオープンするCOREDO室町テラスの紋です。こちらは「集(つどう)」がテーマです。こちらも五街道の「五」を取り入れ、“五”角形の枡で、一升枡を“入”の形に組み、その中に五合枡を“人”の形に組みいれて「一生繁盛益々人入る」という意味になっています。判じ絵的な要素を入れてメッセージをこめつつ、全体として未来へ向かうゲートのようなイメージの形になりました。

朴 : ありがとうございます。今回、自分たちの紋の制作を考えている企業様や、日本橋の街の紋を作ることにトライしようとしているデザイナーの方もいらっしゃるかもしれません。そこで波戸場さんにお尋ねしたいのが、“紋ならではの佇まい”についてです。それを成立させる秘訣って一体どういったことでしょうか?先ほどの判じ絵のようにどこかユニークで、楽しい駄洒落みたいな側面もあったりしそうですが。

承龍 : これは難しいですね…、“紋らしさ”というものにどこでラインを引くかというのが…。紋がロゴとは異なるということは、実物を見ていただければなんとなくは分かると思うのですが、言葉で説明するのはなかなか難しいところがあります。ただ、この後もご説明いたしますが、紋は「線」と「円」による表現なので、こういった「制限されたものの中にある美しさ」みたいなことにチャレンジいただくのは、なかなか普段ないことでしょうから、かえって面白いかもしれませんね。

暖簾は“日本らしさ”を体現するメディアである

朴 : まさにそのあたりのことがデザインのポイントになるかもしれませんし、皆さんにもぜひチャレンジしてもらえたらと思います。今波戸場さんには暖簾のシンボルになりやすい紋というアプローチから語ってもらったのですが、次は暖簾そのものをたくさん作られている中村さんに暖簾の役割やたどってきた歴史、どんなバリエーションがあるかについてお話いただけたらと思います。

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暖簾ディレクターの中村新さん

中村新さん(以下、中村): 有限会社中むら代表の中村新といいます。朴さんからご紹介があったように、僕は普段実際に暖簾を作っていて、商業施設のエントランスや空間に掲げる暖簾を、デザイナーさん、施工主さん、職人さんらの間に入って、企画・デザインから関わって製作しています。弊社のチャレンジとしては2つの大きな軸があります。1つは暖簾のステータスを上げて、商業空間で新しいかたちの暖簾を色々提案していきたいという軸。もうひとつはその暖簾を日本の手工業や工芸の職人の技術を提案するインターフェースにするという軸です。

暖簾は弥生時代にちり避けのための幕のようなものから始まり、室町時代に暖簾に“マーク”を入れ始め、江戸時代に屋外広告として今の価値がほぼ完成して現在まで続いているとされています。僕らにとっては当たり前の存在の暖簾なので、注視したことのない方がほとんどだと思いますが、実は暖簾ってすごく日本らしい文脈が含まれています。

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過去に中村さんがプロデュースや制作に携わった事例の一部

中村 : そのキーワードの1つが「Duality-双対性-」です。僕自身が一番コンセプチュアルで面白いと感じているところで、「空間を遮断せずに分ける」ということです。これってすごく日本らしい価値観だと思いながら暖簾を作っています。僕の考える日本らしさというのは、2つの事項があったときに、それが対立関係ではなく共存しているということです。例えば、文章中で漢字と平仮名が同居しているように、物事に明確な仕切りをつけて遮断しないというのが日本らしくって、暖簾はそれをすごく体現しているように感じます。

続いて、「Media-媒体-」というキーワードでも、日本らしいと思っています。暖簾は日本にしかないもので、海外の方も暖簾という言葉は知らないけれど、和食屋さんにかかっているからあれって和食屋さんのサインだよねっていう、ちょっとアイコニックな部分があるんですね。室町時代に暖簾にマークを入れたのも、当時文字を読める人が少なかったので、「この店は魚屋だよ」と伝えるための目印にしたのからだと言われています。なのでメディアとしてもかなりプリミティブで、日本らしい媒体だと考えています。

もう1つが「Layer-層」ということ、企業や歴史やブランドを象徴するものとしての暖簾という見方です。フランチャイズの原点である「暖簾分け」という言葉もありますよね。物理的ではないけれど、無形の暖簾というのもとても大きな意味を感じます。ただ、無形資産という “重み”はあるにしても、暖簾自体は格式ばっておらず軟らかなもので、自由度が高いことも魅力です。

最後が「Border-境界-」という観点で、鳥居と似ていて“くぐる”ことによって内と外を行き来するというのが日本らしい所作なのではないかと感じていて。例え裏側が見えていても、暖簾をくぐることで内と外が分かれるというのは、この国特有の境界文化を表していると思っています。

企業の“窓”になる、広告と暖簾の類似性

朴 : 中村さんありがとうございます。中村さんにお話いただいたような暖簾の特性を生かしていくと、1枚の平面をデザインするということだけではない、「暖簾をデザインする」ということの意味が見えてくる気がしますね。次は戸田さんからお話いただきたいのですが、戸田さんはクリエーティブディレクターとして企業やブランドのコミュニケーションをお手伝いされています。今回、NIHONBASHI MEGURU FES全体のディレクションもご担当いただいていますが、まさに「ブランドと暖簾」というのも非常に近い関係があるのではないかと思います。暖簾が並ぶ日本橋の景観ということにもこの街らしさがあるのではないかと思うので、そういった観点も含めてご意見いただけると嬉しいです。

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株式会社CCのクリエイティブディレクター・アートディレクター戸田宏一郎さん

戸田宏一郎(以下、戸田): 戸田です、よろしくお願いいたします。僕は株式会社CCという会社を経営していて、クリエイティブとコンサルティングとを融合させながら、ビジネスを創り出すお手伝いをさせていただています。広告という観点では色々な企業と関わりを持たせてもらっていますが、僕自身は暖簾は作ったことがないのでまったくの門外漢です。今日はそんな立場からの発想や観点でお話しますが、暖簾をどんどん延長していくと広告というものに行き着くと思っています。

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Honda「Go,Vantage Point」の広告(2019年)

戸田 : 僕は20年近く広告に関わっていますが、広告は暖簾と比べて非常に情報量が多いと感じています。これは私が担当しているHondaさんの最近の広告です。「Go,Vantage Point」というONE OK ROCKさんを起用して、TVCMと街のポスターなどの仕掛けを、SNS中心に構築しています。情報集積のためのハッシュタグがあり、人々が広告をみて、また次のことを誘発するというような複雑な世の中で、その流れを整理しながらもビジュアルを作るという作業をしています。一方、今回皆さんがチャレンジされる暖簾制作では、一枚の面で勝負をしていくという潔さがあって非常に面白い反面、難しい。でもきっとそこにしかない奥深さがあります。

広告は相当な情報量がありながらも、形は違えど暖簾と同じように、街の中における企業の顔というか「窓」であると思います。意識的に広告がそういう見え方をしていくように仕向けてもいます。企業が何を伝えたいかということを大事にしながら、今ある情報や状態を抽出していって、何か伝える、何かそこに機能を付帯させるということをしたいと考えていて、このように広告的な感覚で暖簾というのを捉えてみると面白いんじゃないかと思っています。

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カフェ・ダイニング、イベントスペース「THE CORE」の店舗外観

戸田 : 最近コンセプト作りからお手伝いさせていただいた「THE CORE」というカフェ・ダイニング、イベントスペースの事例もご紹介します。このとき僕は“CORE(=核)”というアイディアをもとに、モノの根っこにある芯を題材にしたロゴづくりをしようと、食べられた後の林檎の芯の部分をデザインしました。この場所をカフェだけでなくコミュニティとしても活きる場所にしたいという思いを、アダムとイブの話や知の創造の源として林檎にも重ねて、デザインに落とし込むという作業を行ったんです。

また路面店として、街に面する「窓」として見えてくるデザインにもしたので、僕の中では暖簾に等しい機能が備わっていると感じています。このように、「街のウチとソトをツナグこと」の重要性を意識すると面白い暖簾ができるんじゃないでしょうか。今後暖簾はメディアなど形を変えながら、人が通ったときに何かを発見したり、反応したり、あるいは新しい装置にもなり得る魅力を秘めていると感じるので、そのあたりを色々と頭を巡らせてもらえるといいかと。

かつてない正円数で構成された麒麟紋

朴 : 戸田さんありがとうございます。戸田さんのように、ブランドの「窓」というとらえ方からデザインを考えていくという方向性もとても可能性が広がりますね。それでは次のトークテーマに移って、デザインコンペのテーマである「日本橋の街を表現するのれん」について、ゲストの皆さんであればどんなデザインを考えるかを、具体的に踏み込んでお聞きしたいと思います。実際にこのお題で作っていただいたのが会場の後ろにある麒麟の紋です。制作者の波戸場さんにまず、お話をいただけたらなと思っています。

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無数の伏線が曼荼羅のように弧を描く

承龍 : 「2582」。これ何の数字かわかりますか?この数字は、この麒麟の紋に使われている正円の数です。今回の麒麟の紋はすべて、正円の軌跡を使って制作しています。これまで私が紋を書くのに使用した正円の数は、「近衛牡丹」という紋の「1077」が最高でしたが、今回倍以上になりました。麒麟1体描くのに1週間、全体で2週間ちょっとかかっています。

制作プロセスについて簡単にお話させていただきますね。最初にデザインのもとになる写真を、親子2人脚立を持って撮りに行きました。それから撮った写真をトレースして、どの輪郭を正円の軌跡として使うか取捨選択をし、紋に描き上げていきます。今回藍染めをするということで線を太くしなければいけなかったので、線描きの段階から線を太くして、新たに下描きをして、正円を使って清書して最後の形にしていきました。

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麒麟像のモチーフを作る過程

承龍 : デザインは、麒麟を囲む輪の部分にも一捻り加えています。実際の麒麟像にある装飾のデザインを活用して、五街道にちなんでそれを5つ組み合わせて輪にしたデザインにしています。

朴 : みなさん後で近づいてみていただければと思いますが、本当に驚きますよ。正円の軌跡も含めたすべてが作品としてとても美しい。さらに、まさか五街道までかかっているとは…。ハードルが上がってしまったようにも思いますが(笑)、具体的に暖簾を作った方のお話は参考になりますね。

広告や看板類のない日本橋でどんな暖簾を作るか?

朴 : 次に矢後さんに、これまでのものづくりの経験を踏まえて、自分だったらどんな暖簾を作るのかお話をいただければと思います。

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株式会社SIXのアートディレクター・矢後直規さん。今回は審査員とゲストクリエイターを兼務

矢後 : 今回ゲストクリエイターとしてめぐるのれん展に参加するので、波戸場さんの作品と一緒に並ぶものを作らないといけないんですが…、すごいものを見せられてしまいました(笑)。僕まだデザインを考えられていなくて恐縮なのですが、大事なポイントがいくつかあると思いました。

まずは日本橋であること、そして暖簾をアップデートしないといけないこと。それから、ただ店先にかける暖簾でなく、展示用にチューニングしたアイディアじゃないといけないということです。僕はなんとなくカラフルな暖簾を考えていているんです。色が混ざり合っている暖簾ってあまり見たことがないじゃないですか?

というのも、今、デザインを考えるにあたって日本橋に関する本をたくさん読んでいて。江戸時代の日本橋は地方からたくさん商人がやって来て、お店を出しては、繁栄したり撤退したりを繰り返すという、とても代謝のいい街だったということを知ったんです。それには、カラフルな表現が合っているんじゃないかと今のところは思っています。

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「お祭り」をテーマにしたラフォーレ原宿・グランバザールの広告

矢後 : 街のことを考えるという作業については、僕はラフォーレ原宿の仕事に10年ぐらい携わってきました。これはラフォーレのグランバザールという、毎年夏と冬に開催しているセールの広告で「お祭り」をテーマにしています。そもそもバザー(bazaar)にはお祭りという意味があって、さらに皆さんご存知のように、原宿はファッションやカルチャーが生まれてくる街です。人は生まれてきたもの、繁栄したものに対して必ず収穫祭のようなことをするじゃないですか。それで、原宿でバザーをやるということを、この街で生まれたファッションや文化に対する収穫祭という風に位置付けたんですね。

もう一つ「道化師」をテーマにした広告もあって、こちらはサーカスをモチーフにしています。グランバザールは5日間ほどの期間のものなので、大道芸の道化師のようにパッとやって来てパッと帰っちゃうものなんだけど、そこにいるみんなが笑っていて幸せになれるものとしてバザーを捉えました。

このように「原宿で、ラフォーレだとこうなる」ということをずっと考えてきたんですけど、今回は「日本橋で、暖簾だったらこういう風にやるべき」、「こういうことをすれば、日本橋の未来のイメージがつくれる」とか、そんな課題にトライしたいと思っています。

朴 : 原宿や渋谷は広告が街をつくっているところがあるのに対し、日本橋の街には広告や看板類がほとんどないんですよね。だからこそ、暖簾というインターフェースを街でどのようにプレゼンテーションするのか考えるというのは、やはりとてもやり甲斐があることだと思います。でも、きっと矢後さんは発表前に言えることが限られているよね(笑)。

矢後 : カラフルとか言ってるけど、実際は全然カラフルじゃないかもしれないですよ(笑)。

日本橋の未来を担う、アップデートされた暖簾作品を。

朴 : 最後に皆さんから、どんな応募作品を期待しているかということをコメントいただければと思います。

戸田 : デザイナーの性質として、インプットし過ぎてしまうとロジカルにものを作っていって感性的に飛べなくなることも結構多いと思うんです。そこをぶっ飛ばして、まったく見たことのない視点から、自分は暖簾をこう捉えるんだという大胆なチャレンジを期待していますし、僕自身そういう暖簾を見てみたいです。

中村 : 今日はヒントとして4つのキーワードを話させてもらったんですけど、あくまで僕が暖簾制作をしながら思う意味合いや面白いと感じていることです。今戸田さんがおっしゃったように全く別の視点で、もっと突飛な発想で暖簾の面白さを抽出してもらって、そこを原動力に制作してもらったらすごくいいものになるんじゃないか思うので、ぜひ頑張ってください。

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応募を検討する若手デザイナーと参加予定の企業担当者が一同に会した

承龍 : 僕は“紋出身”でなかなか枠から飛び出すことができないところがあるので、新しい感覚で驚かしてもらえるような作品が出てきたら嬉しいかなと思っています。

波戸場耀次さん :紋というのはもともと白と黒という単色の世界から生まれ、正円と直線だけを組み合わせて描かれるという性質を持っています。「制限された中での美」というテーマを持つ紋ですが暖簾も同様に、昔ながらの製法でいうとあまり色を使わないという性質を持っています。今は色々技術が増えてきて、多色やグラデーションの暖簾も作れるようになっています。けど、あえてそんな環境の中で1つでも、白と黒や、単色の世界でチャレンジしていただける作品が出てきたら面白いかなと思いますね。

矢後 : 僕は日本橋のイメージを塗り替えるような暖簾が出てくるといいなと思っていて。グラフィックは未来を描くことができる表現だから、暖簾が描いたイメージで日本橋がどんどん変わっていくような、そんなものが見られたらいいなという風に思います。

朴 : ありがとうございます。去年は「未来ののれん展」というものを開催したのですが、暖簾制作を通してクリエイターと企業とつながりができて、また新しいプロジェクトが生まれるということがありました。暖簾が企業や店舗のブランドを表現するものなのでそういう力を持っているのかなと思います。今回も、クリエイターのみなさんが暖簾を制作されることで、街とつながるということにも発展すると思います。ぜひクリエイターの皆さんはこの機会に、「この街でこんなことができたら素敵かもしれない」ということを野心的に全部ぶつけてもらえたら思います。それではゲストの皆さんに大きな拍手をお願いします。

(会場拍手)

取材・文:皆本類 撮影:岡村大輔

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