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2020.03.17

SAKURA FES NIHONBASHI/OFF TO MEET
オリジナルグッズ制作背景ショートレポート。

SAKURA FES NIHONBASHI/OFF TO MEET
オリジナルグッズ制作背景ショートレポート。

日本橋の街と様々な職種の若手クリエイターをつなぐ共創プロジェクト「nihonbashi β」。これまで様々なコラボレーションプロジェクトを展開してきたnihonbashi β projectが、3月15日(日)よりスタートしたSAKURA FES NIHONBASHIに合わせ、「老舗×クリエイター」のコラボレーションによる商品開発を行いました。SAKURA FES NIHONBASHIのアートディレクターを務める矢後直規さんと、明治32年創業の丸久商店によるオリジナルの「手拭」の制作背景を、ショートレポートします。 

染の技法と表現を知る。

今回コラボレーションに取り組んでくださった丸久商店は、”注染(ちゅうせん)”という染色技法を使った浴衣や手拭などを制作する、明治32年創業の卸問屋です。5代目の斉藤美紗子さんに今回の企画趣旨に賛同いただき、プロジェクトを進めることになりました。

そして初回の顔合わせ。オリジナルの手拭が並ぶ丸久商店で打ち合わせが行われました。最初は斉藤さんから矢後さんへ、手拭制作に用いる染の技法や、色や柄の見え方などについてご説明をいただきました。

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オリジナルの柄の手拭が並ぶ丸久商店。歴代の図案を復刻したものや、新たに考案したものなど、様々な色・柄のものが並ぶ様子は見ているだけでも楽しくなる(画像提供:SAKURA FES NIHONBASHI)

最初に見せていただいたのは注染に用いる型紙。繊細に作られている型紙はそれだけでも美しく、海外にはコレクターがいるほどだと言います。注染の場合は防染糊(もち米と海藻を混ぜて作る)を置くために型紙を使用します。そのため生地へのプリントでよく用いられるシルクスクリーンとは色の出方が逆になります。こうした、普段なかなか知ることのない注染の技法に、矢後さんも興味深々という様子で聞き入っていました。

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漆塗りの型。メッシュのように見える部分は絹でできている「沙(しゃ)」。この「沙」により離れた柄でも表現が可能になる。(画像提供:SAKURA FES NIHONBASHI)

続いて実際に染め上がった手拭を見せていただきました。染ならではの、制御できない色の混ざり方や、偶然性のある色の表現について、斉藤さんから丁寧にご説明をいただきました。色を染分けようとしても、どうしても生じてしまう色の混ざり等を、実際の作品を見せていただきながら確認していきます。

こうした制御されきらない偶発的な表現をじっくりと眺める矢後さん。ふと、「抜染」という手法の手拭に目をとめました。

「この細い白い線がすごく綺麗ですね」

「抜染」とは無地染の生地に染料を注ぐ代わりに抜染剤を注ぎ、その部分の地色を取り除いて模様を出す技法で、注染の場合、抜染剤で染め抜いた後に続けて染料を注ぐことができます。このように地色を取り除き、その部分に新たな色を染める際、わずかな染色範囲のずれによって、色と色の間に繊細な白い線が現れることがあります。矢後さんはその独特の表現に興味持ちました。

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黄色い地の色を抜き、その部分に緑を染めることで、黄と緑の間に細い白い線が現れている。(画像提供:SAKURA FES NIHONBASHI)

SAKURA FES NIHONBASHIのキービジュアルを色違いで展開。

そうして後日、矢後さんから上がってきたデザインラフ。SAKURA FES NIHONBASHIのキービジュアルを3色の色違いで展開する案となりました。細かな柄で表現されたそのラフをもとに、斉藤さんが型紙づくりや染の技法について、その実現性を確認していきます。

手拭い合成済

矢後さんから上がったデザインサンプル。(画像提供:SAKURA FES NIHONBASHI)

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SAKURA FES NIHONBASHIのキービジュアル(画像提供:SAKURA FES NIHONBASHI)

結果、細かい柄ではあるものの、実現可能と回答を得ることができました。また、矢後さんが気に入っていた抜染により現れる白い線については、「偶発的なもののため、ばらつきが出ると思う」との回答。

今年のSAKURA FESのコンセプトは「OFF TO MEET」。ここでしかない体験や、偶発的な出会いということがテーマのひとつにあがっています。染の工程で発生する、この偶発的な色の表現は、「唯一無二」の作品を生み出し、むしろイベントのテーマとの一致性も感じられるものになるかもしれない、そうした期待を生むことになりました。

出来上がるまでわからない、偶発的な注染の表現の魅力。

そしていよいよ制作へ。今回は柄が細かいため、型紙は機械彫りで制作したものを使用します。機械彫りでも、あまりに細かい柄は表現ができないため、デザインデータを工房側からのアドバイスを元に精査していきます。そのように工房と矢後さんの間の調整を何度か行い、デザインデータが確定。いよいよ実際の染の段階へ入っていきます。

今回斉藤さんが選んでくださった工房は東京都足立区にある「旭染工」さん。デザインの表現力が高く、今でも多くの問屋さんからの注文がある、東京の注染工場です。工房の中に入ると驚かされるのはその職人の多さ。若い職人も多いためか、活気があり、技術の伝承が進んでいる様子を目にすることができます。

ここからは制作の工程を簡単にご紹介。

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染に入る前に反物は水洗い⇒天日干し⇒巻き取りが行われる。最後にしわを伸ばすために布を2~3日落ち着かせる。(画像提供:SAKURA FES NIHONBASHI)

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型紙を張った木枠を用いて1枚1枚丁寧に糊付けをしていく。(画像提供:SAKURA FES NIHONBASHI)

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その後糊のついていない部分を染めるため染料を入れ込む。染料は、色見本を見ながら社長がレシピを書き、レシピを元に職人が調合しながら作り上げていくという。(画像提供:SAKURA FES NIHONBASHI)

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洗い場で糊を落としていく。その後外で天日干しを行う。(画像提供:SAKURA FES NIHONBASHI)

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乾いた反物を巻き取り、手拭の大きさに畳んでいく。その後両端を1枚1枚裁断する。(画像提供:SAKURA FES NIHONBASHI)

工房での制作風景を振り返りながら、

「制作過程を工房で頻繁に見ることはできないのですが、来るたびに発見がありますね。」

と斉藤さん。また、出来上がった手拭を見て、

「今回の矢後さんとのコラボレーションでも、新たな気付きと発見がありました。手拭って、通常は大きな図案を入れ込むことが多いんです。なので、ここまで細かい柄に挑戦したのは今回が初めてで。完成するまでどきどきしていたんですが、綺麗な仕上がりをみて、“ここまできれいに表現いただけるんだ”と、私自身も驚きました。改めて、注染は出来上がって感じる表現の深さが魅力だなと思いましたね。」

と語ってくれました。

丸久商店と矢後さんのコラボレーション手拭の販売は3月15日(日)から日本橋案内所(コレド室町1地下1F)で。お近くにお立ち寄りの際は是非商品をご覧ください。

取材・文:坂本彩(Bridgine編集部) 

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