Interview
2020.07.01

手軽で簡単!肉のプロに学ぶ、お家で絶品肉料理。
―特集:おうちで日本橋ごはん#4

手軽で簡単!肉のプロに学ぶ、お家で絶品肉料理。
―特集:おうちで日本橋ごはん#4

人気シリーズ「おうちで日本橋ごはん」サイトとの連携企画、4回目のテーマは毎日の食卓に欠かせない「肉」です。美味しいお肉を食べたいと思ったら高級肉を買う?お店に行かないと?いえいえそうとも限りません。良い素材の見分け方や、自宅で美味しく食べるためのポイント、お店顔負けの簡単肉料理のレシピなどなど、肉のプロであるお二人から聞いた、目から鱗のアイディアをお届けします。

【ご取材先】
伊勢重:七代目 宮本尚樹さん
肉鮮問屋佐々木:五代目 佐々木隆治さん
【ファシリテーター】
フリーアナウンサー:新宮志歩さん

Q.はじめに自己紹介をお願いします。

宮本尚樹さん(以下、宮本):「伊勢重」は明治2年創業のすき焼きの専門店です。私で七代目になります。文明開化の時代に初代が牛鍋屋を始め、東京で一番歴史があるすき焼き専門店と言われております。また精肉・牛佃煮の小売店でもあり、小伝馬町に店舗を構えております。こだわりは、創業当時から変わらず手切りでスライスしていること。美味しい和牛のすき焼きを日々ご提供しております。

伊勢重外観
内観

伊勢重の店舗(画像提供:伊勢重)

佐々木隆治さん(以下、佐々木):大正8年創業の「肉鮮問屋佐々木」の佐々木です。昨年で100周年を迎えました。業務用食肉の卸と合わせてすき焼き店をやっています。アットホームな雰囲気で和牛を楽しめるお店で、32人の大部屋や個室など客席のバリエーションもあるので、ちょっとした会食から宴会までいろいろな用途でご利用頂いています。

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内観

肉鮮問屋佐々木の店舗(画像提供:肉鮮問屋佐々木)

Q. 自宅の肉料理をもっと美味しくするコツは?

新宮志歩さん(以下、新宮):肉はとても身近な食材ですが、そもそもどんな肉が美味しいのか?ということを含めて、意外と知らないことが多いように思います。スーパーや精肉店で良い肉を見分けるコツはありますか?

宮本:スーパーでの簡単な見分け方は、肉の下にあるドリップ(肉汁を吸収する紙)に色がついていないものを選ぶことです。ドリップが赤くなっているのは、時間がたって細胞から肉汁が出てしまっているということで、鮮度が落ちているだけでなく、独特の臭みが出てきていることもあります。これは牛肉だけでなく他の肉にも言えることですね。

佐々木:もうひとつ簡単にできるのは、色が鮮やかなものを選ぶことですね。肉は切りたてが一番美味しいので、緑がかっていたり白っぽく変色したものは避けた方が良い。部位にもよるので一概には言えませんが、赤みが強い方が切りたての可能性が高いですよ。

新宮:より美味しくするために、調理する下処理としてできることはありますか?

宮本:何を作るかによっても方法はいろいろあるのですが、筋切りをすることや酒を使うことは、基本的な下処理として覚えておくと良いですね。ほかにも、角切り肉や鶏肉であれば事前にお酒を揉み込んでおくとか、ステーキ肉ならビールやはちみつに漬けるのも良いです。下処理が大事なのは、たとえばはちみつの場合は、糖分がお肉の中に入り込んでタンパク質が固まるのを防ぎ、厚切り肉でも硬くならずに柔らかく仕上がるから。同じ作用をするヨーグルトやパイナップルでも代用できます。前の日から準備しておくのがベストですが、調理する1、2時間前でも十分効果はありますよ。

佐々木:ちょっとしたひと手間でも、料理の味は驚くほど変わりますよね。下処理以外にも、たとえば焼く時にもちょっとしたポイントがあって、肉は事前に冷蔵庫から室温に戻しておくことが大事です。肉も生き物なので、冷たいところから熱いところに急に環境が変わるとびっくりして固くなっちゃうんですよね。だから、焼く10〜30分前に冷蔵庫から出してあげると、お肉が柔らかく仕上がります。

使用画像

宮本さんも佐々木さんもたくさんの「豆知識」を教えてくださいました(画像:Bridgine編集部)

新宮:保存するときは何かポイントはありますか?私は小分けして冷凍することが多いのですが。

佐々木:一番良いのは、肉同士を触れさせないでキッチンペーパーなどで一枚ずつ包んで冷凍することですね。そこまでするのが難しくても、冷凍は早く、解凍は時間をかけるように心がけるだけでも肉の味は変わってきます。前日の夜に冷凍庫から冷蔵庫の奥に移動しておけば、8時間くらいで解凍されます。時間がないときでもレンジはなるべく使わずに、肉をビニールに入れて流水解凍すれば味を落とさずに解凍できるので、ぜひお試しください。

Q. お家のすき焼きをお店の味に近づけるには?

新宮:次に、お二人のご専門「すき焼き」についても教えてください。我が家でも先日すき焼きをしたのですが、最後の方にはなんだか食べ飽きちゃって…。外で食べるとそんなことはないのですが、どうして家のすき焼きだとお店のようにはいかないんでしょうか?

宮本:お店にもよりますが、伊勢重の割り下は醤油が強めの味付けにしています。砂糖が多いと甘みが強くてくどく感じるのかもしれません。お家でやった時はどうでしたか?

新宮:たしかに最後は煮詰まってすごく甘かった気が…。

宮本:砂糖を減らして醤油が立つような味のバランスにすると、飽きの来ない味になると思いますよ。それに割り下は一晩寝かせると、角がとれてまろやかになるのでおすすめです。

佐々木:うちのお店でも割り下は寝かせています。それと、よく宮本さんと話すのが「皆さん家ではすき焼きじゃなくて“すき煮”をしている。」ということ。先ほど新宮さんはすき焼きが煮詰まったと言っていましたが、煮込む時間が長くて火が通り過ぎても、水分も抜けて味が濃くなるんです。手間かもしれないけど、こまめに割り下を足して煮詰めないようにすることが最後まで美味しく食べるポイントです。

すき焼きサーロイン

伊勢重では職人が手切りしたA5和牛のすき焼きが楽しめる(画像提供:伊勢重)

新宮:割り下の量とか、肉の食べごろとか、他にもコツはありますか?

佐々木:これもお店によってさまざまかと思いますが、まず割り下はそんなにたくさん入れなくても良いと僕は思います。すき“焼き”なので焼く感覚を忘れずに。そして表面の色が変わったくらいで食べた方が、高級肉でなくても比較的柔らかく食べられます。

宮本:うちの店では割り下は軽く湯気が出るくらいで具材を入れます。すき焼きってぐつぐつしているイメージがありますが、そんなに煮たたせなくても良いんです。途中で割り下が減ってきてしまったら、水を足すと薄まってしまうので、お酒や昆布出汁を足してみてください、出汁の深みが増して美味しいですよ。

新宮:なるほど。次やる時はお二人のアドバイスに従ってみます!お家すき焼きがレベルアップしそうです。

佐々木:そうそう、よくすき焼きと比較されるしゃぶしゃぶでもひとつヒントを。しゃぶしゃぶをする時ってつい肉から先に食べたくなりますが、先に野菜をたっぷり入れてから肉を入れると、野菜の出汁が出て肉がより美味しく召し上がれます。秋にかけてはキノコ類を入れるのも最高ですね、これまた良い出汁が出ます。

新宮:それも試します!(笑)

しゃぶしゃぶ

肉鮮問屋佐々木のメニューにはしゃぶしゃぶもある(画像提供:肉鮮問屋佐々木)

Q. 肉を使った簡単レシピを教えてください。

新宮:続いて、自宅で楽しむならこの“肉料理メニュー!”というおすすめのレシピを教えて下さい。

佐々木:僕から紹介したいのはローストビーフです。手間がかかるイメージがあるかもしれませんが、実はそうじゃないんですよ。

新宮:いやいやいや、難しいですって(笑)!

佐々木:笑。ローストビーフはざっくり言うと3行程で出来上がるんです。①まず牛のモモ肉などのブロックの全体に塩胡椒して、②フライパンで表面だけ焼き目をつけ、③100度に余熱したオーブンに60分入れておく。これだけです。粗熱をとって冷蔵庫で一晩寝かせれば薄く切りやすいですし、色鮮やかに赤身が発色しますよ。(レシピはこちら
そしてローストビーフはどちらかというとタレの方が大事だと思うのですが、おすすめなのが九州の甘口醤油。ここに玉ねぎのみじん切りを入れて10〜15分馴染ませれば、簡単で美味しいタレの出来上がりです。

ローストビーフ

意外とシンプルな手順で作れるローストビーフ(画像提供:肉鮮問屋佐々木)

新宮:確かに簡単ですね…タレも美味しそうです。あ、宮本さんがメモってますね(笑)

宮本:メモメモ(笑)。僕からは、皆が大好きなハンバーグのコツを紹介しますね。

新宮:来ました!みんな大好きハンバーグです。

宮本:まずは素材。ハンバーグに使うひき肉は、空気に触れる部分が多く劣化が早いので、鮮度が良いものを使うことが大事です。またタネを作る時に、牛脂をちょっと刻んで中に混ぜるだけでも肉汁が溢れるハンバーグになる。つなぎにはパン粉でなく、水分の吸収率が高い乾燥のお麩を砕いて入れるのがおすすめです。合わせる玉ねぎは、焦げないようにじっくり炒めたものを一晩置いておくと甘さが際立ちますよ。こうした工夫で、インスタ映えする肉汁たっぷりのジューシーなハンバーグになります。(レシピはこちら

ハンバーグ

自宅でも肉汁たっぷりのハンバーグができる。(画像提供:伊勢重)

新宮:ソースはどんなものがおすすめですか?

宮本:九州の甘口醤油に、刻んだ玉ねぎを入れると良いですね。

新宮:あれ?!どこかで聞いたことのある…(笑)

宮本:それは冗談として(笑)、焼いたあとのフライパンに残った肉汁に醤油やみりんを足して煮詰めると、簡単でコクのある絶品ソースになります。

新宮:余ったひき肉はどのように活用したら良いでしょうか?

宮本:タネをたくさん作っておいてメンチカツにしても良いし、カレーでもチャーハンでも、ひき肉は万能ですよ!

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ひき肉はアレンジ自在な万能食材(画像提供:肉鮮問屋佐々木)

佐々木:ひき肉もそうですが、割り下も余りがちじゃないですか?長ネギやきのこ、その他冷蔵庫の野菜何でも構わないんですが、全部みじん切りにして余ったひき肉と一緒に割り下で味付けするだけで、そぼろ丼になります。

宮本:それ、簡単で良いよね。うちでも賄いで出しているメニューです。(レシピはこちら)割り下もけっこうアレンジが自在で、擦りおろしたにんにくやごま油を入れると、コクのある美味しい万能だれになります。そこにはちみつを加えて豚肉を漬けておくと、お子さんも喜ぶ豚丼の具材に。香ばしい匂いがするので食欲がそそられるし、この季節には特におすすめです。

そぼろ丼

色鮮やかな三色そぼろ丼。白滝が使われているのがすき焼き店ならでは。(画像提供:伊勢重)

Q. 通販・デリバリー・テイクアウトメニュー等のご紹介について

新宮:各店で出されているテイクアウト等のメニューをご紹介ください。

宮本:伊勢重ではお店と同じ材料ですき焼きを楽しんでいただける、「おうちですき焼きセット」などを4月からデリバリーでご提供しています。なかなか外食できない日々が続いていますので、自宅でお祝い事などをする時にぜひ使って頂きたいですね。

また、テイクアウトのお弁当はもともとやっていたのですが、最近は種類も増やし、盛り付けもさらに工夫をしたりしてパワーアップしました。おかげさまでご好評いただいておりますので、こちらも是非お試しください。

おうちで和牛三昧
お弁当メニュー【令和2年バージョン】

伊勢重のデリバリーメニューとお持ち帰りメニュー(画像提供:伊勢重)

佐々木:うちも今回の営業自粛期間でいろいろ考えて、「肉鮮問屋佐々木」を改めて知ってもらうためにチラシをポスティングしたり、お弁当や精肉の小売を始めたりと、新しいことを始めました。

日本橋の多くの飲食店が閉店している間、地元の方は食べるところに困っている様子でした。スーパーにも人が集中してしまい、食の選択肢が少なくなっていたので、何かできないかと思って始めたのがお弁当の配達です。配達ならお客さんが接触するのも一人だけだし、安心して利用してもらえるかと。ちなみにお弁当は自転車で行けるところは全部配達するつもりでやっているので、どこまで行けるか挑戦中です(笑)。

弁当
デリバリー

肉鮮問屋佐々木のテイクアウトメニューと精肉の小売メニューの一例(画像提供:肉鮮問屋佐々木)

新宮:精肉の小売を始められたとのことですが、反応はいかがですか?

佐々木:いろいろ内容を吟味しながら、4種類のセットを出していたのですが、サービスしすぎたのか「量が多くてなかなか食べきれない」と言われました(笑)。より喜んでいただける内容にすべく、日々改善中です。それと、今ネットショップのBASEを利用した販売もやっているのですが、今後改めてECは強化していく予定です。

宮本:うちは楽天とアマゾンに出店していますが、佐々木くんに勧められてBASEも始めましたよ。集客力のあるモールでネットショップを強化する目的のひとつは、一人でも多くの方に知ってもらいたいから。うまく店頭と連携させながら柔軟に対応したいですね。

Q. 最後にメッセージをお願いします。

宮本:日本橋の飲食店は皆、美味しくて安全なものを提供することが当たり前だと思って営業しています。まだまだ外食することに不安もあるかもしれませんが、感染症の対策は万全にしていますので、ぜひ食の街・日本橋に足を運んでいただき、楽しいひと時を過ごしていただきたいです。

佐々木:創業から100年たったところで、大きな試練を経験していますが、これは必ず乗り越えられると思っています。そしてその先に新しい肉屋の未来・日本橋の未来が待っていると考えているので、今できることに柔軟にチャレンジして、肉を通して元気やスタミナを届けられるような存在になりたいと思います。

取材・文:丑田美奈子(Konel) 撮影:岡村大輔

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