日本橋の本格メニューでおうちごはんを一新! 老舗店主たちによるトーク&調理パフォーマンス開催。 ―日本橋FOOD SESSIONレポート vol.1―
日本橋の本格メニューでおうちごはんを一新! 老舗店主たちによるトーク&調理パフォーマンス開催。 ―日本橋FOOD SESSIONレポート vol.1―
去る3月28日(日)、“おうちで楽しむ食”をテーマにしたトークショー&調理実演パフォーマンス「日本橋FOOD SESSION」の第一弾が、誠品生活日本橋「 誠品生活市集COOKING STUDIO」にて開催されました。日本橋の春の風物詩「SAKURA FES NIHONBASHI」の一環である同企画は、各ジャンルの料理に精通するプロを招き、江戸の食文化をより深く楽しく学び進化させる特別なイベントです。 初回の登壇者は、日本橋の味・食文化を守り継承する職人集団「日本橋三四四会」の皆さん。鰻、鮨、日本と台湾のコラボ料理という3ジャンルの本格メニューをおうちで楽しむ秘訣が、調理実演とともに解説されました。軽妙なトークと和気あいあいとした雰囲気の中で紹介された、老舗の知恵と技術の数々はきっと参考になるはず。今回は当日の様子をダイジェストでお送りします。
■SESSION1 「鰻」を楽しもう おうちで鰻レシピ
登壇者の皆さん: (写真右から) 岩本 公宏さん(日本橋いづもや)、湧井 浩之さん(うなぎ割烹 大江戸)、鴛尾 明さん(高嶋家)
<店主の皆さんに聞きました>
Q.今回の見どころは?
今回は鰻の真空パックを使い、定番の鰻料理&アレンジ料理のレシピ、そして鰻に合うお酒をご紹介します。ご自宅でも鰻専門店の味と雰囲気を感じていただけると嬉しいです。日本橋の食文化を受け継いできた我々「三四四会」ならではの調理ポイントにもご注目ください。
Q . よく耳にする“江戸前”とは何ですか?
“江戸前”とは鰻屋が使い始めて広がった言葉です。昔は浅草川や深川が鰻の漁場だったのですが、江戸の前=東京湾で採れた鰻は特別だという意味で「江戸前鰻」と言われ、次第に「江戸前鮨」など他の料理でも使われるようになりました。
<実演レシピ>
1.「うざく」
① うなぎは冷蔵庫で冷たくしてから5mm幅の短冊に切る。
きゅうり、 みょうがは千切り、 ラディッシュは細切りにする。
きゅうりは立て塩、 みょうが、 ラディッシュは水に放つ。
<POINT>鰻は冷やしてから切ると形が崩れにくい。
<POINT>きゅうりは薄くしすぎない方が、歯ごたえが残って○。うざくの“う”は鰻の“う”で、 “ざく”はザクザク切ることを言うのだそう
② 土佐酢をつくる。鍋にAの材料を入れて混ぜ合わせて火にかけて沸かし、かつおぶしを加えて落ち着いたら濾して冷ます。
③ ボウルに①のうなぎ、水気を絞ったきゅうり、みょうが、白ごまを混ぜ合わせ、水で適宜薄めた②を入れて和え、混ぜ合わせる。
④ 器に③を盛りつけ、 ラディッシュを天盛りにする。
2.「う巻き」
① うなぎの蒲焼を湯煎で温めておく。
② 卵は溶きほぐし、割り下90mlを混ぜ合わせる。
③ 隠し味にうなぎのタレを適量入れる。
④ 卵焼き器に油を入れて中火で熱し、①のうなぎの蒲焼を芯にしてだし巻き卵をつくる要領で、③の卵液を入れて、繰り返し巻いて焼きながら焼き上げる。
<POINT>油は多めに入れて卵焼き器の四隅に行き渡るように。だし巻き卵は三つ折りにするのが一般的だが、う巻きの場合は二つ折りにするのがオススメ。鍋を振って返すのが難しければ、横から卵の下に箸を入れて返すとやりやすい
3.「鰻チャーハン」
① 真空パック鰻は一口大に刻み、ネギは粗みじん切りにする。卵はといておく。
② ボウルに冷やご飯を入れ、卵液を半量加えて混ぜ合わせる。塩・胡椒を振る。
<POINT>このひと手間でお米が卵でコーティングされ、炒飯がパラパラに仕上がる。
③ フライパンに油をひき、強火で熱したら②を投入。強火のままフライパンをゆすりながら混ぜる。
<POINT>「サラダ油でももちろんOK ですが、弱火で熱した太白胡麻油にネギの青い部分を入れ、そのまましばらく弱火で炒めると、家庭で簡単に中華料理店の香りを再現できるネギ油に。これが炒飯によく合うので捨てないで!」と岩本さん。会場にはネギ油の香ばしい匂いが
④ ③をフライパンの片側に寄せ、空いたところで残りの卵液を炒める(この卵が炒飯の具に)。
⑤ フライパンに鰻とネギを投入し、鰻が崩れないように軽く混ぜる。
⑥ 出汁パックの袋を破き、中の粉末を振り入れる。
⑦ 鍋肌から鰻のタレを回し入れ、味を調整する。
出来上がった鰻料理3品
<お酒のペアリング>
「脂分が多い鰻は、温かい飲み物と合わせていただくと旨味が増して美味しいんです」と、鴛尾さんからは熱燗にオススメの日本酒をご紹介。中でも香りのない“純米酒”が料理を引き立てるとのこと。埼玉県の酒蔵・神亀酒造の「神亀」「ひこ孫」「大吟醸」や、鴛尾さん自ら田植えにも行ったという「真穂人」などが並びました。
「熱燗にするときはレンジは使わず、湯煎でゆっくり温めること。50〜60℃まで上げてから少し冷ましたところで飲むのが一番美味しいですよ」
■SESSION2 「お寿司」を楽しもう おうちで巻きずしレシピ
登壇者:(写真左から)𠮷野 正敏さん(𠮷野鮨本店)、寳井 英晴さん(蛇の市本店)、佐久間 一郎さん(繁乃鮨)
<店主の皆さんに聞きました>
Q.お寿司の歴史を教えてください。
お寿司の原型は実は東南アジアで生まれています。もともとは「熟鮓(なれずし)」と呼ばれるお米を使って魚などを発酵させた食べ物で、お米は食べずに捨ててしまっていたんですよ。それが東南アジアから中国に広まり、日本へ伝わってきました。そして酢を使って酸味を出し、お米と一緒に食すようになった。ちなみに関西の「箱寿司」の方が先に誕生しており、より早く手軽に食べる料理として1820年代頃に「握り寿司」が生まれたと言われています。江戸の人はせっかちだったと言われますが、その場で握ってサッと食べられるスタイルが江戸っ子の気性にも合ったようですね。“江戸のファーストフード”としての江戸前寿司はやがて日本の代表的な料理となり、現在に至ります。
Q.お寿司屋さんではどのように楽しむのが良いですか?
型にとらわれず、自由に楽しんでいただきたいですね。お腹の空き具合や気分によって、その場で食べたいものを決められるのもお寿司の魅力。好きなネタを何度頼んでも良いし、頼む順番もルールはありません。それと、気になることがあったらぜひ職人さんに聞いてみて、会話を楽しんでいただけたら。会話の中で寿司に詳しくなれば、ますます寿司屋が楽しくなるはずです。
<実演レシピ>
1.「細巻き」
① 巻き簾を用意し、その手前側に海苔を敷く。
<POINT>巻き簾の凹凸のある面に海苔を敷く。巻き簾を綴じている紐が上側に来るように置くのが正解
約100年前の「蛇の市」の焼印が押されたオリジナルの巻き簾
② 寿司飯を海苔の中央より少し上に置き、横に薄く広げる
<POINT>手に寿司飯がつかないようにするには、酢を手に馴染ませながら作業すると良い。
③ ごま、たくあん、ねぎとろの順にネタを並べる。
④ 二段階で巻いていく。巻き簀を手前から奥に一巻きし上からキュッと押さえる。この時に上に海苔が2cm程度見えるように残し、その部分が巻き込まれるように再度もう一巻きする。
2.「太巻き」
① 巻き簾に海苔を敷く。
② 寿司飯を置き、海苔の上下を残し全面に広げる。
③ 写真を参考に、お好みのネタを順に並べる。
<POINT>バラバラになりやすいネタは卵焼きやネギトロなど形状を保ちやすいネタで挟むと○。
太巻きを巻く前の様子。応用で手巻き寿司サイズを作ることも可。食べやすく綺麗な手巻き寿司になる
④ 二段階で巻いていく。巻き簀を手前から奥に一巻きし上からキュッと押さえる。この時に上に海苔が2cm程度見えるように残し、その部分が巻き込まれるように再度もう一巻きする。
⑤ 切る際は包丁を手前から奥にスッと深く入れてから引くこと。小刻みに切ると海苔がよれてしまうので注意。
美味しい酢飯を作るポイントは、固めに炊いた温かいご飯にすし酢を入れて冷ましながら、切るように混ぜること。小型の扇風機を使って冷ます裏技も。「べちゃっとした酢飯にしないためには、“すしのこ”という市販品を使うのもオススメ」と𠮷野さん
今回作った2品。いくらは盛り付け時に上からかけるときれいに仕上がる
■SESSION3 食の街のコラボ 台湾食材活用おうちレシピ
登壇者:野永 喜三夫さん(日本橋ゆかり)
<野永さんに聞きました>
Q.今日の見どころは?
台湾食材×和食というテーマでお料理を考えてきました。せっかくなので台湾の食材の新しい可能性にチャレンジしたいと思い、共通の食材「ビーフン」と組み合わせて3品の多様な味に仕上げています。ビーフンだけでなく、うどんやご飯にも合うので、自宅でもアレンジしやすいメニューになったと思います。
Q.台湾調味料を使った感想はいかがですか?
日本にはない独特の癖になる味わいでしたね。インパクトがあってスパイシーな味のものも多く、和食に取り入れることで新たな発見もあり僕も勉強になりました。誠品生活さんにご紹介いただいた食材は全部使ってみたので(笑)、どんな味になるか楽しみにしてください。 (材料欄にある※のついた食材はすべて誠品生活日本橋にて購入可能)
<実演レシピ>
1.「キノコのスパイスうま煮」
① ビーフンをゆでてザルにあげておく。
② 火をつける前のフライパンにキノコ類をすべて投入する。
シイタケ:石づきを取って、縦に薄切りにする。
シメジ:手でほぐす。
エノキ:袋ごと3等分に切って、根本の部分はほぐす。
④ 旨味のもとになる「腐乳(辣:辛味あり・紅:塩気あり)」を入れる。
⑤ 「萬用(スパイスパウダー。すり鉢などであらかじめ細かくすると良い。)」、「豆油伯(しょうゆのような調味料)」、「金槍魚鬆(カツオ節の代用になる粉末調味料)」「赤ネギ(フライドオニオンのようなもの)」「樹子粒(スパイシーな実)」を投入し、「工研鳥酢(ウスターソースに近い調味料)」を回しかける。
⑥ 「頂級鵝油(カモ油)」を入れ、火をつけ中火で炒める。
⑦ かさが1/3くらいになるまで煮込み、ビーフンの上に盛りつけ、飾りにきゅうりや小ネギを散らす。
どのメニューも材料を全て入れてフライパンで焼くだけというシンプルさで、家庭でも取り入れやすい
2.「スパイシーチリミートトマトソース」
① ビーフンをゆでてザルにあげておく。
② 火をつける前のフライパンに、合挽き肉、みじん切りにした長ねぎを入れる。
<POINT>長ねぎは煮込んで柔らかくなるため、青くて固い部分も捨てずにすべて使用する。
③ ②に酒を入れ(台湾米酒などもオススメ)、黒コショウ(もしくは麻辣)をつぶしたもの、片栗粉、
ケチャップ、「沙茶醤」、「甜辣醤(スイートチリソース)」、「醤油膏(とろみ醤油)」、「腐乳(辣・紅)」、「赤ネギ」、「金槍魚鬆」、「頂級鵝油」「萬用」を入れ、火をつける。
<POINT>材料を全て準備してから火を入れることでゆっくり温まり、肉が固くなりにくい。
④ 飾り用のきゅうりを千切りにし、仕上げに添える。
野永さんのテンポ良く楽しいトークに、会場では笑いが絶えなかった
3.「チンジャオビーフンロースー」
①ビーフンをゆでてザルにあげておく。
②ピーマンを縦に8等分に切る。
<POINT>ヘタの部分も含めて縦に切り、種だけを取ることで、ピーマンを無駄なく使うことができる。
③ 生姜は歯ごたえを残すために5mm幅の千切りにしておく。
④ 豚バラは食べやすい大きさに切り、火をつけていないフライパンに入れ、上から片栗粉をかけ菜箸で肉をほぐす。
<POINT>片栗粉をかけた状態でほぐすことで、肉の一枚一枚にまんべんなく粉が行き渡り、きれいにコーティングされる。
⑤ ④に「工研鳥酢」、「沙茶醤」、「頂級鵝油」を加え、火をつける。
⑥ フライパンが温まったら③の生姜を入れ、生姜が透明になってきたらピーマン、白だし、水、「萬用」「赤ネギ」を入れて混ぜる。(「工研鳥酢」を少し加えるなどで味の調整をする)
⑦ ⑥にビーフンを入れ、よく混ぜる。
チンジャオビーフンロースーの最後の工程。味のしみにくい筍の代わりに香味野菜の生姜を使うことで、手早く作ることができる
取材・文:丑田美奈子(Konel) 撮影:岡村大輔