Collaboration TalkInterview
2022.08.10

「ととのう」だけじゃない。OOOが創る“コミュニケーション・サウナ”から生まれるものとは?

「ととのう」だけじゃない。OOOが創る“コミュニケーション・サウナ”から生まれるものとは?

2022年4月、馬喰町のオフィスビル内に誕生した完全予約・貸切制のサウナ「SAUNA OOO(サウナ・オー)」。 “コミュニケーション・サウナ”をコンセプトにしたこの場所は、他フロアのカフェやコワーキングスペースとも連動し、新しい形のサウナライフを提案しています。今回は日本橋エリアで働くサウナ好きクリエイターの青木陽平さん(we+)、都淳朗さん(コネル)が実際にSAUNA OOOを体験。同施設の運営元である蒼樹株式会社のCEO・包 怡萱さんを交え、SAUNA OOOが生まれた経緯やその魅力、街における可能性について語り合っていただきました。

「みんなが集まりたくなる場所」にするための、オフィス+サウナという発想

―まずはSAUNA OOOがどんな場所なのか教えてください。

包 怡萱さん(以下、包):当ビルの2階~7階を、弊社の“THEATER WWW”というプロジェクトで使用しています。2階がSAUNA OOOで、3階が+O+O+O(トトト)というサウナ飯を提供している飲食スペース、4階がコワーキングスペースです。5階~7階はプライベートオフィスを予定していて、7階は先行オープンしています。サウナに併設するオフィスという形態を、今回新しいチャレンジとして提案していくプロジェクトです。

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蒼樹株式会社のCEO、包さん

―SAUNA OOOのコンセプト“コミュニケーション・サウナ”はどんな経緯で生まれたのですか?

包:コロナ禍以降、世の中のワークスタイルもかなり変わったので、単純に仕事をするだけの場所はもう要らないなと思ったんです。でも、「じゃあオフィスは本当にもう要らないのか?」って考えると、やはり自分たちも週に1回はランチ会で集まる方がコミュニケーションが円滑になるし、大事な会議は対面でやった方が効率が良いという実感もありました。だから、これからはみんなが集まりたくなるようなオフィスが求められるんじゃないかと思ったんです。それで「仕事をより効率化できる場所」ということより、「もっと会話が生まれる場所」にすることに重点を置いて、サウナ+オフィスという今回のチャレンジをスタートしました。オフィスフロアも“ライフスタイル・オフィス”をコンセプトに、コミュニケーションを生む空間構成にかなりこだわって設計しています。

―包さんはもともとサウナがお好きだったのでしょうか?

包:私はサウナー歴1年弱くらいです。昨年のコロナ禍の真っ最中に友人のすすめで初めて体験しました。でも最初はサウナ室も水風呂も苦手で、「なんでこんな風に自分を虐待しなきゃいけないんだろう?」って不思議だったんですよ(笑)。でも周りのサウナ好きの方には経営者の人が多くて、そういう方々がハマるからには何かあるんだろうなと思って、3回ほど我慢して入ってみたら、「あっ、なるほどね!」って瞬間が来たんです。そこからはもう止まらなくなりました。最初の頃はソロサウナに通っていて、静かに自分と向き合える場所として気に入っていたんですけど、それだけではない可能性があるかもしれないと思うようになって。サウナの新たな選択肢として“コミュニケーション”というジャンルのサウナがあっていいんじゃないかという想いが今回のプロジェクトに繋がっています。

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2室ある貸切サウナのうち、□の部屋の内観。手前が水風呂、奥は防水のソファーマットを配した「ととのい空間」になっている

―SAUNA OOOのデザインコンセプトはフィンランド式サウナ×茶室だそうですが、「茶室」という様式を取り入れた理由は?

包:うちは東洋文化をかなり大事にしている会社で、「お茶」を一つの文化を象徴するコンテンツとしてとらえており、別のプロジェクトで「Chasuru」というお茶の自社ブランドも展開しています。そもそもなぜお茶にこだわるのかというと、コーヒーがどんどん効率化・ファスト化していくのに対して、人々はもっとスローなものを求めているんじゃないかと思ったから。一瞬でも立ち止まって携帯を置き、静かにお茶を飲むような時間を、皆さんどこか心の奥底で求めているんじゃないかなと、特にコロナ禍を通して感じました。

茶室というのは日本の建築文化の原点と言われていて、自分と向き合う場所でもあり、相手=お客さんと出会って向き合う場所ですよね。究極に狭い空間の中で無限の可能性が広がるというのが、個人的にもすごく好きな文化です。それに、茶室でお茶をいただきながら自分の心身と向き合うのって、現代のサウナと似ていませんか? なので、OOOを作るにあたり、茶室からはかなりヒントを得ました。

―サウナ飯やドリンクがいただけるカフェ、+O+O+O(トトト)のコンセプトとこだわっている点を教えてください。

包:サウナ+アルファの体験にこだわって企画しました。サウナ室を出て新しい世界に飛び立つとまた違うことが待っている、というところまで含めて一つのフルコース体験として提供したかった。それで最後の飲食も、OOOでのサウナ体験の一部として考えていました。サウナ中に飲むドリンクや、上がってきてからの食べ物=サ飯、お店のカウンターで生まれる会話。そういうものがすべてプラスアルファの体験になればという想いをこめて、お店の名前も「プラス」の文字を配した+O+O+O(トトト)になっています。

貸切で時間と空間を共有することで、お互いの距離が縮まる

―では今回OOOのサウナを実際に体験したお2人から、自己紹介をお願いします。

都淳朗さん(以下、都):株式会社コネルでデザイナー、プランナーをしている都と申します。アイディアを出すところからデザインやテクノロジーをからめて実装・制作まで幅広くやっています。サウナー歴は3年くらいです。大学院生でお金もなかったころ、何かリフレッシュする方法が欲しいなと思っていた時に友達にすすめられたサウナに入って、そこからハマって今に至ります。最低週1回はサウナに行ってて、出張のたびに地方のサウナを調べて入りに行くのも好きです。

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今回サウナを実際に体験していただいた青木さん(左)と都さん(右)

青木陽平さん(以下、青木):we+というデザインスタジオの青木と申します。デザイナーとしてデザインリサーチやインスタレーション、アートピースなど幅広くやっています。サウナ―歴は7年くらいです。25歳の大晦日、友達に連れられて行った横浜のスパ施設でロウリュを体験し、サウナってこんな楽しみ方があったのか!と知ったのがハマったきっかけでした。僕も都さんと同じで、旅行や出張に行く時はその土地にあるサウナを調べてしっかり旅程に組み込んで行きますね。地元のおじさんたちが大胆に楽しんでいるようなサウナもすごく好きです。

都:わかります。地元のおっちゃんたちの会話を聞きながら入るサウナっていいですよね。

青木:そこでコミュニケーションが生まれてるのを傍から見てるとリラックスできるんですよね。

―お二人ともクリエイター職ですが、自分の仕事やライフスタイルとサウナの関係性ってどんなものですか?

都:僕にとってはアイディアを練りに行く場所でもあるし、リフレッシュでもあるし、健康のためでもあるんですけど、感覚としてはPCの「ゴミ箱を空にする」というコマンドに似ています。PCでファイルをゴミ箱に入れても、実際はまだファイルが残っているじゃないですか。それと同じで、捨てたつもりでもまだ脳の片隅にホコリみたいに記憶や考えが残ってたりする。でもサウナに行くとそういうものがごっそり取れて脳がすっきりクルクル回るようになる感じがするんです。あとは入る時に何かしら考え事のテーマを決めていますね。サウナの中で一つのことをじっくり考え続けて外気浴に行くと、ふわっとアイディアが思い浮かんだりするので、アイディア出しのために行く場所でもあります。

青木:僕もけっこう都さんと似てますね。物を作っていると一つのことに集中しすぎちゃって頭から離れなくなってしまうのはすごくよくわかります。なので僕はサウナに行く時は「今日はもう何もしないぞ、デトックスするぞ」と決めて、デジタルデバイスから自分を切り離して、サウナで頭の中を空っぽにしています。

包:私もサウナの中では何も考えないようにしています。それはそれで難しいんですけどね。最初は「熱い、熱い」って我慢しながら耐えるんですけど、だんだん自然と身体がそれを受け入れて「自分の身体は今熱いと感じてる」と客観的に思えるようになると、ランナーズ・ハイみたいに気持ちよくなってくるんですよね。

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茶室を模したサウナ室ではフィンランド式でセルフロウリュも可能

―今回体験していただいたOOOのサウナはいかがでしたか?コミュニケーションは促進されたでしょうか。

都:貸切スタイルのサウナに入ったのは初めてだったんですけど、主体的に、エゴイスティックに入れるのがすごく良かったです。街のサウナってたくさんの人が利用するから周りの音も気になるし、場所ごとに独自のルールがあるから、気を遣う部分があるんですよね。なので自分のコンディションにそこまで集中できない。他人の邪魔をせず自分も整うために流れに乗って他人の背景になりきる必要があります。でもOOOのサウナは少人数での貸切だし、今回は2人だけでの体験だったので、お互い無言で自分の身体の声に集中する時間も取れましたし、青木さんとの一体感みたいなものも感じました。

青木:あとは「この辺のサウナだとどこ行きます?」とか、サウナに関する話をしたりね。シャワーからサウナ、水風呂までの全行程を一緒にやって、その合間合間に「熱いね」「気持ちいいね」と言い合うことでもコミュニケーションが生まれる。これが街の銭湯とかサウナだと、「先入ってていいよ」って感じでバラバラになってしまったりしますけど、ここは少人数で空間自体がプライベートなので、一緒に入る人とより親密になれる感じがします。

都:さっきも僕ら、体験しながら自然と向かい合ってましたよね。

青木:対面するのにちょうどいい距離感でしたよね。そしてお互いにタオルで熱波を送りあうという。

都:あれは初めてのコミュニケーション体験でしたね(笑)。

包:そうでしたか(笑)。実際にそういう風に使ってもらってるんだというのを聞くのは嬉しいです。

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―OOOにはサウナと上階のシェアオフィスの利用がセットになったプランもあります。実際にはどんな方が利用されていますか?

包:コワーキングスペース+サウナと、プライベートオフィス+サウナのプランがあります。どちらのプランも平日朝7時~10時の間、サウナが使い放題になります。業種は意外とバラバラで、IT系、製造業の会社さん、あと個人で副業をやってる方、サウナ系インフルエンサーの方などにご利用いただいています。様々な方が、サウナ好きという共通点があって集まっている感じです。サウナの話になるとみんな“あの感覚”がわかるので、話も弾みますね。私も今まで本当に「ととのう」がわからなかったんですが、急にわかるようになって仲間入りできたのがうれしいです(笑)。

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「最高に気持ちよかった!」と語った青木さん

日々時間に追われる感覚をリセットするための場所が求められている

―そもそも、なぜSAUNA OOOの開業場所に日本橋を選ばれたのでしょうか?

包:個人的に東京の西側より下町感+文化の奥行きがある東側エリアが好きなんです。特に今、日本橋エリアはITやおもしろいベンチャー企業がたくさん集まってきているという情報をちょくちょくメディアで見ていて、ここだったら新しいことを始めるのに追い風がありそうだなと思いました。それと、このビルは駅からかなり近い好物件なのにコロナ禍の影響で2階以上のテナントがほとんど退去していた状況でした。それがすごくもったいなくて、サウナ+オフィスというプロジェクトでもっと付加価値を付けられると考えました。

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対談に使用した4階のコワーキングスペースは緑が多くリラックスできる空間。サウナへのアイデアが次々と飛び交った。

―日本橋周辺でも神田のSaunaLabさん、八丁堀の湊湯さんなど、オフィス街の中にサウナが誕生し人気を集めています。包さんはこのような流れをどうご覧になっていますか?

包:この界隈で働いている方は皆さん日々時間に追われる感覚をお持ちだと思うので、その慌ただしさをリセットするためのコンテンツにニーズがあると思っています。そして最初にもお話した通り、コロナ禍は従来のような“毎日オフィスに行って働く”というライフスタイルからの転換点であると考えているので、オフィス+アルファのコンテンツとして、日本橋のような働く人が多い街とサウナは非常に相性がいいと考えています。

―ユーザー目線では、日本橋とサウナの組み合わせはいかがですか?

都:見慣れたエリアにこんな場所があったんだ!っていう驚きがありました。普段サウナを利用する時は仕事をしている場を離れて外気浴でその場所の空気を吸うのも好きなんですけど、ここは逆に自分が働いてる街=外の世界から切り離されて、閉鎖された環境でサウナに入ることだけに集中できる導線になっているのもよかったです。

青木:仕事で毎日来てる「ON」の街に安心できる「OFF」のスポットができた感じですね。最初から最後までずっとリラックスできて、緊張するところがなかったです。あとサウナ後の飲食まですべて同じ施設の中で完結できるというのはすごく楽でいいなと思いました。

SAUNA OOOを街に開かれた場所にしていきたい

―今後、日本橋やSAUNA OOOでやってみたいことやコラボはありますか?

包:まだ企画段階ではありますが、お茶の先生とコラボしたイベントを考えています。茶室がデザインコンセプトのサウナですし、お茶とサウナについて語り合えるようなイベントをやりたいです。あとは「“OOO” NIGHT!」といって、サウナのインフルエンサーの方をお呼びするイベントを不定期でやっているので、今後も+O+O+Oを会場に、オフィス会員以外の方も含めた、サウナ好き同士の出会いの場を作れたらいいですね。街に開かれた場所としてみなさんとどう仲良くなっていくかというのを今探っているところです。あとは+O+O+Oのサウナの後の飲食メニューで、お茶やお茶漬け関係のところとコラボできたらいいなと思います。

―日本橋にはお茶もお出汁も老舗の企業がありますから、コラボ相手の候補はたくさんありますね。青木さんと都さんは、ユーザー目線で「こんなものがあったらいいな」というアイディアはありますか?

都:自分の好みにサウナの温度やアロマをカスタムできると嬉しいですね。僕、一時期スマートウォッチをつけてサウナに入って、自分が一番心地よく感じるサウナでの滞在時間とか、今すごく汗の出方がいいなと感じた時の心拍数を計測してたことがあるんです。そんな風に自分にベストなサウナの設定に調整できると、よりプライベートで充実したサウナ体験ができそう。

青木:OOOは静かに自分の身体の声を聴くのにぴったりの場所なので、外気浴の場所でサウナに合うストレッチやヨガなんかができたらいいなと思いました。二次元コードを読み込むとサウナ後にピッタリのストレッチや、サウナの効果をより高めるヨガの動画が見られて、その場でできるみたいなのがあったら、2時間のサウナ体験がすごくリラックスして楽しめそうですね。

都:あとは専属の熱波師(サウナで利用者を扇ぎ、風を送る人)とマッサージ師がいてくれたら……

包:実は今企画していることがあって。サウナ室内ではタオルを使って扇ぐのが一般的なんですけど、茶室にちなんで団扇を導入できないかと模索しているところです。

都:いいですね! 今日、2人で団扇が欲しいよねって話してたんです。タオルで的確に熱波を送るのって意外と難しいので、団扇が導入されたら嬉しいです。

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