Collaboration TalkInterview
2023.06.21

街の一員を目指して、一歩ずつ。会員制社交クラブが地域との交流にこだわる理由。

街の一員を目指して、一歩ずつ。会員制社交クラブが地域との交流にこだわる理由。

1928年に設立された会員制の国際社交クラブ「東京アメリカンクラブ」。麻布台の拠点の他にもう一つ、日本橋室町三井タワーの6階にサテライトクラブがあります。社交クラブというとクローズドなイメージもありますが、「東京アメリカンクラブ日本橋」は数々の地元イベントにも積極的に参加し、街との交流を深めています。その狙いについて、日本橋サテライトクラブのマネージングディレクターである山崎雅秋さんと、同クラブの日本橋委員会委員長のジェフリー・ボーマンさんにお話をうかがいました。

日本橋における異文化交流のハブとしてサテライトクラブが誕生

―まずは東京アメリカンクラブがどんな組織なのか教えてください。

山崎:1928年、今から95年前に有楽町で51名のアメリカ人がコミュニティを作ったのが東京アメリカンクラブの始まりです。海外、特にアメリカから日本へ駐在などで来た人が言葉や文化、食事に関する情報を交換できる場所をつくることを目的に作られました。太平洋戦争の頃には一度クローズしましたが、その後1954年に再開して現在の麻布台へ移り、そこからどんどん大きくなっていったという歴史があります。

麻布台の東京アメリカンクラブには大きく二つの役割があり、一つは「ビジネス」としての繋がりを提供すること。そしてもう一つは「ファミリー」としての繋がりを提供することです。日本に赴任してきて地域のコミュニティにうまく入れない駐在員の家族同士が情報交換したり、日本人のメンバーと海外からのメンバーが交流を持つためのイベントも多く実施しています。例えばイースターやサンクスギビングなど、日本ではあまり馴染みがないけれどアメリカでは定番の季節イベントなども開催しています。他にも忘年会や毎月最初の金曜日に開催するイベントがあり、メンバーの方が「あそこに行けば誰かしらに会える、新しい出会いがある」という場を提供しています。

―麻布台に対して、日本橋サテライトクラブはどのような位置づけで作られたのでしょうか?

山崎:2017年に、三井不動産の方から日本橋エリアの再開発にあたり何か協業できないかというお話をいただきました。三井不動産さんとしては日本橋の魅力的な文化や歴史を海外の人たちにどうアピールしていくかという課題を持っていたんですね。それに対して私たちは、日本の文化に精通していないのもありこの街をちょっとハードルの高い場所だと感じているところに課題がありました。そんな中、私たちに「日本橋に文化交流のハブを作ってほしい」という要望をいただいたので、これは日本橋に入っていく良い機会なのではないかと感じ、新たなチャレンジとして取り組むことになりました。そこから3年かけて2021年3月にこちらがオープンした形です。

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マネージングディレクターの山崎さん(左)。街と連携したイベント時には東京アメリカンクラブのチームを率いる。日本橋は昔から憧れの街だったそう

―日本橋サテライトクラブのメンバーはどのような方が多いですか?

山崎:麻布台のメンバーは男性で40代~50代半ばの方が多く、ファミリー層がメインです。これに対して日本橋はメンバーの年齢層が25~45歳くらいと若く、女性の比率も少し高いですね。日本橋は幅広い層の方に社交クラブ=コミュニティに入る生活を体験していただきやすいように、麻布台よりも入会金や会費をリーズナブルに設定しています。

海外から日本に来た者として、日本橋の良さを外に伝える架け橋になれたら

―東京アメリカンクラブ日本橋は日本橋エリアのお祭りや清掃活動に参加し、地域との交流に積極的です。このような活動をしている理由は?

ボーマン:私はもともと2009年から麻布台の方の会員で、オレゴン出身のアメリカ人なんですが、2013年頃から日本橋エリアで働くことになり、室町周辺に来る機会が増えました。この辺りを歩いていると歴史の深さに圧倒されますし、本当におもしろい。再開発で新しいビルが並ぶモダンな街でありながら、歴史も守ろうとしていますよね。そのコンビネーションがすごいな、自分も何かしたいなと思って東京アメリカンクラブ日本橋の会員で構成される「日本橋委員会」に参加しました。

地域のイベントに参加しているのは、私が魅了されている日本橋の歴史や文化、街の素晴らしさを私たちのクラブの会員にも体験してもらえると思ったからです。日本橋の「橋」は「Bridge」でしょう? 海外から日本に来た者として、日本橋の良さを外に伝える架け橋になれたらいいですね。

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日本語も堪能なボーマンさん。アメリカンクラブ日本橋の施設ではジャグジーがお気に入りとのこと

山崎:クローズドなままでもアメリカンクラブは成り立ちますが、日本橋サテライトクラブは麻布台とは目的がちょっと違うんですね。私たち日本橋のクラブは積極的に皆さんと交流しながら、アメリカンクラブというのがまずあること、そしてなぜここいるのかということを、地域イベントに参加してお知らせすることが一つのミッションだと思っています。

―具体的にどのようなイベントや活動に参加されていますか?

ボーマン:最初は2022年の7月、日本橋の橋洗いに参加しました。昨年はまだ新型コロナが完全に収まっていなかったこともあって参加できる人数が限られており、日本橋サテライトクラブの委員会から数人だけ参加しました。しかしその様子を麻布台と日本橋のメンバーにシェアしたら、「面白そう」「自分も参加してみたい」という声が多くあり、それなら皆でもっと地域のイベントに参加していこう、ということになりました。その後は2022年秋の福徳神社のお祭り「神幸祭」にも参加しましたし、2023年は神田祭にも参加することができました。

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(画像提供:東京アメリカンクラブ日本橋)

―2023年4月にはSAKURA FES NIHONBASHIにてポップアップバーも展開しましたね。

山崎:今回のポップアップバーは東京アメリカンクラブの名前を前面に出して、積極的に皆さんと交流したいということをアピールできる絶好の機会でした。どこかのお店と合同の企画ではなく、東京アメリカンクラブとしての単独出店だということで、とても嬉しかったと同時に「これで失敗したらクラブの名前が……」と心配にもなりました(笑)。しかしバーやキッチンのスタッフたちに「こんな機会があるんだけどどう思う?」と訊いたら、みんな「ぜひやりましょう!」とすごく乗り気でメニューを作ってくれて。ここで私たちがやることはコミュニティに参画し、東京アメリカンクラブという存在を理解していただいてハブを作ることだと思っているので、数時間のイベントではありましたが周辺の方々に私たちの活動を見てもらえたのは良かったと思います。今後もそういった機会があればどんどん参加していきたいですね。

地域コミュニティと「お互い様」でやっていきたい

―ポップアップバーでは皆さん素敵な法被を着ていらっしゃいましたね。

ボーマン:ありがとうございます。あの法被を作ったのは先ほど話した福徳神社のお祭りの時でした。お祭りに参加するにあたってはいくつかのルールがあって、まずきちんとした法被を着ていないといけなかったんです。それで三井不動産のサポートで、東京アメリカンクラブ日本橋オリジナルの法被を作ってもらいました。そしてせっかくだからもっとこの法被を着て参加できるイベントを探そうと話していたので、SAKURA FES NIHONBASHIでまた着ることができて嬉しかったですね。

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(画像提供:東京アメリカンクラブ日本橋)

山崎:デザイン案も30くらいあったんですよ。それを委員会で投票して2~3週間かけて絞っていきました。メンバーも日本やアメリカ以外にいろんな国の方がいますから、その中でアメリカンクラブ日本橋らしい法被ってどんなだろう?ということをディベートして、最終的にあのデザインになったんです。赤と青でアメリカらしいデザインなんですけど、袖をめくると内側に星が入っているんですよ。星条旗のイメージだけど派手すぎなくて、気に入っています。

―今年4年ぶりに開催された神田祭にも参加されたとのこと。この地域に住む・働く人にとっては一度は参加したい憧れのイベントでもありますね。

ボーマン:お神輿は担がなかったんですが、鳳輦巡行(ほうれいじゅんこう)に参加させてもらいました。室町3丁目の町内会が誘ってくれまして。

山崎:そうそう、アメリカンクラブ日本橋は町内会にも参加しているんです。3丁目の町会長が東京アメリカンクラブの会員でもあるタナチョーさんで、ぜひ町内会に参加してもらえないかと言ってくださって。こちらとしても地域活動に参加できる場所を探していたのでぜひ、ということで加入しました。ゆくゆくはお神輿を担がせてもらえるよう、少しずつ徳を積んでいきます(笑)。

―どんどん街でのネットワークが広がっているんですね。街と関係性を築いていくうえで心がけていることはありますか?

山崎:いきなり新参者がずかずかと地域コミュニティに入っていっても、たぶん反発を受けるというか、良い印象を与えないと思うんですよね。メンバーの皆さんはいろんなことにどんどん参加したがるんですけど、その辺は文化の違いがあるので「ちょっと待って」と(笑)。あまり日本的にする必要もないと思いますが、そこはバランスを見ながらやるようにしています。でも機会があるたびに私たちは日本橋に根付きたいんだという意思を地域の方にお伝えしていきたいですね。

とはいえ…、街に入っていく前は実はちょっと不安だったんですよ。「なんだ、会員制のお高くとまった外国人の集まりじゃないか」と思われるんじゃないかって。でも全くそんなことはなく温かく迎えていただき、嬉しかったですね。福徳神社のお祭りの時も、「これからはこうやってインターナショナルになっていかなきゃダメなんだよな!」と街の方々がおっしゃってたので、予想以上にオープンマインドなんだなあと驚きました。

ボーマン:交流することで、こちらから地域ビジネスに貢献できることもあると思いますしね。東京アメリカンクラブが地域の活動に参加するようになって、日本橋も国際的な雰囲気になってきたよねと言ってもらえるようになりました。日本橋をもっとインバウンドが立ち寄る国際的な場所にしたいので、サポートしてもらえないかという話もいただいて。最近またインバウンド需要が戻ってきましたけれど、彼らが行くのは銀座や六本木が多く、あまり室町エリアには呼び込めていない。でも東京アメリカンクラブならこの地域に来てもらえるように外国人に宣伝できるし、それがこの地域のビジネスのためにもなる。日本橋のコミュニティと東京アメリカンクラブが「お互い様」でやっていけたらいいなと思います。

外国人も喜ぶアメリカンクラブ日本橋オリジナルのグッズを作りたい

―今後、日本橋を舞台にやってみたいことや、地元企業やお店とコラボしてみたいことはありますか?

山崎:実はすでにコラボの実績もありまして、アメリカンクラブ日本橋の開業時に、「八海山 千年こうじや」さんにスカイツリーと日本橋の風景をデザインしたオリジナルのお酒を作っていただきました。八海山 千年こうじやさんも東京アメリカンクラブ日本橋のメンバーにもなっていただいているんですよ。

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東京アメリカンクラブ日本橋オリジナルデザインの八海山。ボトルと箱には日本橋の街がデザインされている(画像提供:東京アメリカンクラブ日本橋)

ボーマン:以前、メンバーと一緒に日本橋の老舗のお店を回ったことがあるんです。小津和紙や黒江屋、伊場仙、にんべん、木屋といったお店で、その時はただそれぞれのお店を見るだけだったのですが、これらのお店と組んで何かやりたいですね。

山崎:麻布台の方はグッズを作っているので、日本橋でも何か作りたいという気持ちはあります。例えばアメリカンクラブのロゴが入ったオリジナルの扇子とか、日本橋ならではの工芸品でグッズを作るのは夢ですね。外国人の方がお土産に買って行かれるようなもので。

ボーマン:扇子や包丁、和紙なんかが人気ですよね。

山崎:クラブのオリジナルで、みなさんに楽しんでいただけるものが何か作れたらいいなと思っています。

―最後に、東京アメリカンクラブ日本橋に興味を持たれた方、入ってみたいと思った方へのメッセージをお願いします。

ボーマン:このクラブでは地域イベントに参加する以外にも、いろいろなイベントをやっています。ワインやクラフトビールのテイスティング、ゴルフ、ヨガ、フィットネス、アートなど、いろいろな趣味の会があります。またネットワーキングを目的にした会もあって、6月は沖縄のラム酒の会、7月は秋田から酒造会社の社長に来ていただく日本酒の会など毎月テーマが変わって楽しいですよ。国際交流ができますし、海外に興味がある日本人や、英語ができて海外に行ったことのある日本人のメンバーもたくさんいます。ぜひビジネスと趣味、両方の出会いを見つけてください。
コンタクトフォームからお問い合わせいただければ私たちにも繋がります。詳しい話が聞きたいという方はぜひご連絡ください。

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「日本橋の老舗のお店」

東京アメリカンクラブ日本橋のVIPルームで日本橋の歴史について学びながら、日本橋ならではの料理を味わうイベントはすごくやりたいですね。初めから老舗のお店に行くのは外国人にはちょっと気が引けてしまいがちですが、私たちの施設の中なら安心して楽しめるはず。お店にとってもいいPRの機会になると思うので、参加してくれるスピーカーと料理人がいらっしゃいましたらぜひ。(ボーマンさん)

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「道路元標」

日本橋の上にある道路元標を見ると、ここが日本の中心なんだなあといつも感慨深くなります。私は岩手県水沢市(現奥州市)の出身なので、地元には「東京まで○km」という表示がありましたが、その東京ってどこなんだろうと思っていたものです。その起点となるのがこの道路元標なんですよね。まさに日本の、東京の中心。だから東京アメリカンクラブが日本橋にサテライトクラブを作るという話になった時も、日本の中心に進出するんだという気持ちがありました。(山崎さん)

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