Collaboration TalkInterview
2023.04.26

Bridgineから生まれた日本橋のコラボレーション。プライベートサウナ「SAUNA OOO」×クリエイター集団「Konel」のこだわりのサウナ団扇が誕生するまで。

Bridgineから生まれた日本橋のコラボレーション。プライベートサウナ「SAUNA OOO」×クリエイター集団「Konel」のこだわりのサウナ団扇が誕生するまで。

2022年8月にBridgineでも紹介した日本橋馬喰町の完全予約制・貸切サウナ「 SAUNA OOO(サウナ・オー、以下OOO)」。このインタビューで飛び出したサウナグッズのアイディアが、実際に商品化されることになりました。商品化にあたっては、日本橋を拠点に活動するクリエイター集団のKonelが参加。OOOを運営する蒼樹株式会社のCEO・包 怡萱さんと、デザインを担当したKonelのクリエイターのアディト(Andraditya Respati)さんにお話をうかがいました。

OOOのコンセプトに合わせたオーガニックなサウナ団扇

―まず自己紹介をお願いいたします。

包:蒼樹株式会社の包です。弊社は当ビルでOOOやサウナ飯を提供するカフェ+O+O+O(トトト)、コワーキングスペースやプライベートオフィスが一体となったプロジェクト「THEATER WWW”」を展開しています。他にも宿泊施設などを手掛けているのですが、最近は観光とホテルのニーズが戻って来たこともあり新規のホテルも順次オープンしていく予定です。

アディト:Konelでデザイナーをしているアディトです。基本はグラフィックデザイナーですが、「つなぎふと」の商品開発やウェブデザイン、時にはカメラマンも担当したりと、幅広く活動しています。今回は商品開発担当としてこのプロジェクトに参加しました。

―アディトさんはサウナはお好きですか?

アディト:Konelのメンバーにサウナ好きが多いのもあり、僕もこの企画をきっかけに最近よく行くようになりました。最初の頃は「何これ……つらいじゃん」って思ってましたが(笑)。でもサウナに詳しい人に楽しみ方を教えてもらって、「つらいラインを超えたらすごく気持ちよくなるよ」と言われたので我慢してみたら、「おお、いけるかも!」という感覚がわかりました。僕は押上に住んでるんですが、あの周辺もいいサウナが多くて、最近はサウナが楽しいです。

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アディトさん(左)と包さん(右)。お二人とも「最初はつらかったけど“ととのう”を実感してからはサウナが好きになった」とのこと

―今回はOOOとKonelがコラボしてサウナ団扇が誕生しましたが、そもそも団扇ってサウナにおいてどんなアイテムなのでしょうか?

包:一般的なサウナでは熱波師と呼ばれる方がタオルを使って風を起こし、利用者がより熱さを感じられるようにしてくれます。しかし OOOのサウナは茶室をコンセプトにしているのでかなり小さい空間で、その中で仲間たちとコミュニケーションするというのがテーマなので、その中でタオルを振るというのはちょっとコンセプトに合わないと思ったんです。でも風を送るのなら団扇でもできるよね、という発想で、茶室サウナに合うものとしてサウナ団扇を企画しました。

―前回の取材時には「サウナの中で使える団扇があったらいいですね」というふわっとしたアイディアの状態でしたが、それがどんな経緯で今回商品化にまで至ったのか、流れをお聞きできますか?

※前回のインタビューはこちら https://www.bridgine.com/2022/08/10/ooo/

包:最初は日本橋の老舗さんとコラボできたらということでスタートした企画だったのですが、いろいろと仕様上の課題があることがわかり、まだ実現には至っていません。というのも、いろいろな形の団扇を検討してみたのですが、サウナという高温多湿の環境で和紙製品を使うのはなかなか難しくて。でもよくあるプラスチック素材のものは使いたくないとか、基本の素材選びにはなかなか苦労しました。いろいろな試作品を実際にサウナ室で使ってみて、使えそうな素材を絞り込み、最終的に現時点ではこちらの木の団扇が一番変形が少なく使いやすくて、デザイン性も高いという結果にたどり着きました。並行して日本橋の老舗さんとのコラボも実現できたらと引き続き模索中です。

―コラボするなら日本橋の老舗と、というのは最初から前提としてあったんですね。

包:はい。せっかく日本橋にお店を構えたし、昔からの文化があるエリアですから。OOOとしてもヨーロッパで生まれたサウナをそのままやっているわけではなく、日本の文化を織り交ぜて独自の文化を創り出したいという気持ちもあるので、今回のサウナ団扇も今までにない新しいものを作りたいという想いで動いています。

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サイズやシルエットにもこだわったサウナ団扇。お手本にしたのは老舗の商品が持つ美しさだそう

―今こちらに試作品をお持ちいただいていますが、かなりいろいろ試されたんですね。

アディト:そうなんです。老舗さんの伝統的な団扇はすごく美しいんですけど、和紙と布を貼り合わせている糊が熱に弱かったり、和紙が湿気で反ってしまうという問題がありました。あと耐久性に加え、コスト面でも難しい面もありましたね。よくイベントなんかで配っているプラスチック製のものも検討しましたが、イメージがOOOには合ってないと思いましたし。

包:今の時代に合ってるとは言えないですしね。

アディト:そうそう。個人的にどんなプロダクトでもプラスチック素材はできるだけ避けたいと思っているので、サウナ団扇もオーガニックな素材でやりたくて。

サウナの中でボーっとする時間まで楽しくなるようなデザイン

―デザインについてはどんな風に決まっていったのでしょうか?

アディト:最初はもう一人のKonelのデザイナーと相談しながら、制約なく自由に考えました。サウナの熱でゴッホの絵の顔が赤くなるのはどうだろうとか。お店の名前がOOOだから、「Oの窓から未来が見える」をテーマにしたデザインはどうだろうとか。あとは「サウナを出たら食べたいもの」ということで、シンプルに食べ物の絵をデザインしてみたり。そしてこれが採用になったデザインの原案です。最初はぽっちゃりな人が団扇のフレームにただフィットするように描かれてたんですが、サウナでよくやるポーズやヨガのポーズ、座禅のポーズを取り入れて3つのデザインに仕上げました。

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編集部撮影

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サウナ団扇のデザインを担当したアディトさん。素材から形、大きさ、そしてプリントするデザインまで細部にわたりこだわった

―包さんの方からはデザインに関してどんなリクエストをされましたか?

包:OOOのイメージに合わせて丸みを帯びた形にすることと、あとはユーモアがあって意味深な感じも出したかったですね。なので裏面のデザインのように、ずっと見つめていられるような、一つのモチーフにいくつかの意味を持たせたものにしたいという話はしました。

アディト:裏面は、サウナで時間が過ぎるのを待つ間に何か読んだりできたらいいなというアイディアから生まれました。包さんとのミーティングで、ただの読み物じゃなくて間違い探しみたいなものができたらおもしろいんじゃないかという話になって。びっしり印刷された文字の中から「TOTONOU(ととのう)」という言葉を探すパズルゲームになっています。しかも+O+O+O(トトト)のロゴと同じフォントで、NはUを逆さまにしただけなのでより混乱する作りになっています(笑)。正解がどこに入っているかは僕しか知りません。10か所くらい正解の文字列があるので、サウナに入りながらぜひ探してみてください。

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裏面のパズルゲームはなかなかの難易度(編集部撮影)

―絵の付け方はレーザーカッターでの印刷だそうですね。

アディト:最初はレーザーでプリントするということも決まっていませんでした。シルクスクリーンでやってみようかとか、いくつか案はあって。表面のキャラクターを黒ベースでデザインしたので黒でカラー印刷してみたんですけど、ちょっと絵が強すぎるなと思ったので逆に白にしてみたりとか、いくつか試しました。で、Konelがレーザーカッターを持っているのでこれで1回試してみようと思ってやってみたら意外といける!という感じで。なのでこれはレーザーで焼いた木の色そのままです。

包:シンプルでいいですよね。自然の色ですし、色落ちの心配もない。一枚一枚木目も違うので、それも含めて味があるなって。

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試作を重ねて完成したサウナ団扇。レーザープリンターで絵を焼き付けた団扇からは、木の香りが漂う

―ちなみにこのキャラクターには名前はあるのでしょうか?

アディト:名前はまだないんです。

包:オーくんって勝手に呼んでいます(笑)。

アディト:包さんからこのキャラクターを他の商品にも使いたいとリクエストいただいていて、アイコン化したデザインも作りました。

包:サウナ団扇と同時発売を予定している新作のサウナハットもこのデザインを使っているので、サウナ団扇と揃えていただくのもいいかと思います。OOOの店頭の他、オンラインショップでも取り扱う予定です。

地域SNSで日本橋のコミュニティをもっとつなげたい

―OOOは2023年4月でオープン1年を迎えました。この1年は包さんにとってはどんな1年でしたか。

包:思った以上にたくさんの方に来ていただき、常に満室状態が続いているのですごく嬉しいです。「オープン直後は話題性で人が来るけど、そんなに続かないんじゃないか」みたいなことを言われたことがあって、口では「そんなことないよ」とは言いつつ内心では少し不安だったところもあったんです(笑)。でも自分もサウナーとして約2年間いろんなサウナに行って、ブームと文化の違いって“本当に必要かどうか”だなって思ったんですね。流行ってるからみんなとりあえず行くというところから始まっても、本当に自分には必要だと思う人が多ければそれが文化になっていく。そう感じてもらえるものを弊社としても作り出したいなと思っていますし、北欧生まれのサウナに日本のエッセンスを加えて、独自の文化として確立させていけたらと思っています。

―前回お話をうかがった時に、もっと日本橋のコミュニティとも繋がっていきたいとおっしゃっていましたが、具体的にどんな活動をされていますか。

包:NHKなど、テレビに出させていただいたのをきっかけに地域の方から「知ってるよ」と声をかけていただくことが増えましたね。会社としては“街ログ”という地域SNSを再リリースしました。これは実名制のSNSで、馬喰横山エリアの近所のお店さんにお声がけして、一緒にイベントをやったりして街を盛り上げる試みも実施しています。街ログは通常のSNSの機能に加えてお店ごとにイベントやクーポンを設定・発信できるようにしていて、街ログを見た人限定で特別なサービスを受けられたりします。OOOとしても割引料金で参加できるサウナ体験会を企画しています。まだ実験段階で現時点では招待制なので、もし登録されている方がいたらぜひ日本橋にご縁のある方を誘ってみてください。

街ログ

街ログ公式サイトより 

―Konelも日本橋横山町にオフィスを構えていますが、どんな風に街と繋がっていますか?

アディト:社内にカルチャーデザイナーという役割の人がいて、バックオフィスをやりながら社内イベントや福利厚生を企画しています。僕は食事の時間を大事にしたいタイプなんですけど、Konelは忙しくてランチが3時になっちゃったり、そもそも抜いてしまう人も多い。それをなんとかしようということでカルチャーデザイナーを中心に始めたのが、社員食堂の試みです。でもただの社員食堂ではつまらないので、周辺のコミュニティも巻き込もうということでできたのが「トライ食堂」です。

Konelと同じく横山町に拠点を置く+PLUS LOBBYとMIDORI.soの協力をいただきながら、月一くらいのペースで開催しています。近所の会社の人も集まって来て、みんなで美味しいケータリングの出来立てランチを食べるというシンプルな企画です。ただ、コミュニケーションを取るためのイベントなのでルールがあって、1人参加はダメなんです。必ず誰かと一緒に行かないといけない。ちなみにこのトライ食堂という名前は“挑戦”のTRYと、横山町周辺の土地が三角形の形を=トライアングルのトライと、“到来”をかけて3つの意味をこめているそうです。

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Konelオフィスの隣が+PLUS LOBBY。実施日にはポスターでお知らせ(編集部撮影)

包:おもしろそう。うちも一緒に何かやれそうですね。

アディト:結構楽しいですよ。そこで知り合った人と一緒に仕事をすることになったりもしましたし。実はこのあいだOOOの社員の方にもここでお会いしました。

包:そういったイベントの開催告知を街ログで出すこともできますね。せっかく近くにある会社同士、一緒に何かできたらいいですね。

―ご近所同士の有機的なつながりが生まれていて良いですね。

アディト:まさにそうで、今回のサウナ団扇のプロジェクトで僕がいいなと思ったのは、KonelとOOOのオフィス同士の距離が近かったこと。サンプルが上がったら包さんに電話して「今から行ってサンプル見せていいですか」「OK」って感じで、すぐ行って見せて帰る、そのプロセスが“近所づきあい”って感じですごく良かったんですよ。メール送って返事を待って……じゃなくて、直でスピーディなコミュニケーションができたのは楽しかったです。

包:確かにコロナ禍でミーティングと言えばオンラインが主流になりましたけど、やっぱりオフラインで顔を合わせた方がアイディアがいっぱい出たりとか、相手のリアクションの機微がわかったりしますよね。そういう意味でもオフラインで会えるのが理想的ではあると思います。

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蒼樹株式会社の代表、包さん。サウナやお茶ブランド、ホテルなど手掛ける事業は多岐にわたる

―今後ですが、OOOは東京以外にも進出されるご予定だとか。詳しくお聞きできますか。

包:5月末に福岡の中洲川端、6月末に大阪の心斎橋に、それぞれサウナ施設をオープンを予定しています。茶室サウナというコンセプトは東京のOOOと同じで、完全予約制・貸切でプライベートなサウナが楽しめます。サウナはそれぞれ3室ずつあり、東京より少し大きい施設になっています。

―今回団扇のコラボは実現しましたが、さらに日本橋でコラボしてみたいお店などはありますか?

包:お茶や伝統工芸といった東洋文化の発信は弊社もずっとやってきているのですが、サウナで出せるお茶などのコラボはやりたいですね。職人さんのお茶にまつわるプロダクトを展開したり、お茶ロウリュなんかもやりたいですね。

アディト:老舗さんとの団扇コラボは引き続きやっていきたいですね。伝統工芸の制作プロセスって今の感覚では簡単に真似できないものが多くて、それが結構面白いと思うんですよね。Konelが持っているようなテクノロジーと、そういう伝統工芸の組み合わせで何か面白いものが作れたらと思います。飲食関係のパッケージなんかも興味があります。和菓子のリブランディングとか、商品開発自体にも興味がありますね。

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