Interview
2024.03.21

東レの技術と日本橋の布文化の出会い。SAKURA TEXTILE SHEET誕生の裏側

東レの技術と日本橋の布文化の出会い。SAKURA TEXTILE SHEET誕生の裏側

2024年3月15日(金)〜2024年3月31日(日)に日本橋にて開催されるファッションとデザインのイベント、東京クリエイティブサロン日本橋2024。桜の季節を楽しむ企画の一つとして、イベント限定アイテム「SAKURA TEXTILE SHEET」が登場します。国内外のアーティスト5名が思い思いの桜をデザインした大判のマルチシートで、ベースとなる布地には東レ株式会社のファッションテキスタイル「senbism」を使用。お花見のレジャーシートだけではなく、風呂敷やスカーフなどさまざまな使い方が可能です。今回のコラボ実現の経緯や、日本橋と東レの関係について、東レ株式会社 婦人・紳士衣料事業部の小澤昌弘さんにお聞きしました。

ゆかりのある日本橋から、素材を通して社会に貢献する

—まず、東レの事業内容についてご紹介をお願いします。

東レはまもなく創業100周年を迎える企業で、元々はレーヨン糸の生産会社としてスタートしました。その後基礎素材メーカーとして、他にも樹脂やフィルム・炭素繊維複合材料など、さまざまな分野で先端材料を作っています。東洋レーヨンというのが創業時の会社名で、1970年に東レ株式会社に改名しました。

—東レの中で小澤さんは普段どんなお仕事を担当されているのでしょうか?

私が所属しているのは婦人・紳士衣料事業部です。主に東レの工場で作られるポリエステルやナイロンといった合成繊維を使って、ファッション衣料用の生地を作る担当です。生地の開発から生産・販売まで一貫してこの事業部でやっています。

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入社当時は水質改善の仕事に興味を持っていたという小澤さん。しかし繊維素材の面白さに惹かれ、テキスタイルブランド「senbism」に長く関わることになったそう

—東レと日本橋にはどのような繋がりがあるのでしょうか?

元々、東洋レーヨンという繊維会社は三井物産によって創業されたので、三井のグループ企業として日本橋に拠点を置くことになったそうです。途中、ビルの建て替え等で移転してはいますが本社の所在地はずっと日本橋ですね。

現在は日本橋の清掃活動などに参加するなど、街と関わる活動を定期的にしているほか、昨年夏にはグループ会社のMOONRAKERS TECHNOLOGIES株式会社が日本橋で開催されたイベントのスタッフTシャツを提供しています。

※関連記事:先端技術を日常の暮らしに。東レグループのD2Cプロジェクト「MOONRAKERS」がユーザーと創造する「ミライの生活」

自社ブランド「senbism」をもっと一般の方にも知ってもらえたら

—昨年も街のイベントとのコラボレーションがあったとのことですが、今回はクリエイティブの祭典・東京クリエイティブサロン日本橋とのコラボが実現しました。ここに至った経緯について教えてください。

初めは、三井不動産さんから東京クリエイティブサロン日本橋というイベントがあるとお聞きして、調べてみると「東京を世界一のクリエイティブシティにする」というかっこ良いテーマを掲げたイベントだと知りまして。まさに我々が「senbism」というブランドでやってきたことに通ずるものがあるな、と興味を持ちました。ちょうど我々も社内で「senbism」をもっと世の中に伝えていくためにはどうしたら良いかと、昨年1年間じっくり時間をかけて議論をしてたところだったんです。なので、共感できるテーマを持ったイベントで「senbism」を改めてお披露目する場とさせていただくのは良いんじゃないかなと思い至りました。

—「senbism」とはどんなブランドなのか、教えていただけますか?

「senbism」は基本的に三つの要素を持っています。一つ目が東レの先端技術を駆使して作られた素材であること。二つ目はメイドインジャパン、日本製の生地であること。そして三つ目が、ファッション用途のテキスタイルであること。この三つを兼ね備えた素材群を「senbism」というブランドとして扱っています。「senbism」という名前自体は輸出先行で、イタリアやフランスのアパレルブランドに素材を紹介する際に、我々の素材コレクションの総称として10年ほど前から使ってはいたんですが、今改めてこれをブランドと位置付けています。ちなみに「senbism」のセンは繊維のセン、ビは美、それに主義を意味する「ism」をつけた造語で「senbism」です。

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SAKURA TEXTILE SHEETのサンプル。デザインは全5種類で、撥水加工されているので水や汚れに強い。イベント期間中に限定2000枚が特設自動販売機で販売される。また、同じデザインを使用した多様なアイテムがイベント内で展開される

自販機・シートイメージ

自販機とデザインのイメージ。参加アーティストはLee Izumida、鈴木マサル、三嶋さつき、An Chen、Alexis Jamet(画像:プレスリリースより)

■SAKURA TEXTILE SHEET

特設自販機設置期間:2024年3月15日(金)~3月31日(日)
特設自販機設置場所:福徳の森、COREDO室町テラス1B1F(日本橋案内所前)、COREDO室町テラスB1F(郵便局前)

—そしてその「senbism」の生地を使用したSAKURA TEXTILE SHEETが完成しました。今回使用した素材はどんな特長があるのですか?

まず、どの生地も100%リサイクル原料(リサイクルペットボトル)で作られています。また今回はレジャーシート等に使用されることを想定し、生地に桜のデザインをプリントしてから仕上げに撥水加工をしています。生地は100点近くある素材サンプルの中から、今回のイベントの趣旨に合うものということで東京クリエイティブサロン日本橋実行委員会さんに選んでいただきました。

—SAKURA TEXTILE SHEETは一般向けに販売されますが、同じデザインの布を使用したSAKURA TEXTILE PARKではこれらのデザインが飾られた憩いの場も展開されます。

SAKURA TEXTILE PARKで飾る用の生地はSAKURA TEXTILE SHEETより少し薄いのですが、糸1本1本にすごく繊細な表情があって、光が透けることですごく陰影感のある見え方がする生地なんですよ。光が差し込んだ時にどんな感じになるのか、ぜひ見ていただきたいと思いますし、私も現地に行くのが楽しみです。

会場イメージ

木組の造作にsenbismSAKURA TEXTILE SHEETと同じデザインの生地を飾るSAKURA TEXTILE PARK。日本橋散策の休憩場所としてだけでなく、映え写真スポットとしてもおすすめ。土日祝はここでSAKURA TEXTILE SHEETも購入できる(画像:プレスリリースより)

■SAKURA TEXTILE PARK

開催日:2024年3月15日(金)~3月31日(日)
場 所:COREDO室町テラス大屋根広場

—今回は桜をテーマにしたイベント/デザインですが、日本橋勤務が長いという小澤さんは毎年会社周辺で桜をご覧になりますか?

そうですね、やっぱり三井住友銀行と三越の間の江戸桜通りなどは、毎年見頃になると足を運んで写真に撮っています。今まで意識していませんでしたが、言われてみると今回のコラボで“桜と日本橋”という自分の中のイメージの蓄積が一つにまとまった感じがありますね。

触れた人をインスパイアするようなブランドでありたい

—今回は企業としてsenbismというブランドを消費者により近いところで届けられるイベントということで、ユーザーからのフィードバックなども期待していますか?

我々は素材メーカーなので、最終製品になって初めてお客様に届くということの方が多いですが、今回のイベントでは我々の素材へのこだわりや素材自体の面白さを、日本橋に来る一般の方に伝えていけたら、というのが最終目標です。もちろん1回では難しいでしょうけど、3年5年、さらには10年と続けていったら、合成繊維の中でsenbismという名前が皆さんの中に残るんじゃないかな、という期待はありますね。これまでも日本の消費者の方々にもsenbismの商品を手に取ってはいただいているはずなのですが、「senbismの生地使用」と書いてあるわけじゃないですし、そういう打ち出し方は今までしてこなかったんです。ただ、これからはsenbismとして認識していただくプロモーションもやっていきたいと思っているので、今回のコラボはその一歩というところです。

—今後、日本橋でこんなことができたら、というヴィジョンはありますか?

日本橋には百貨店や商業施設がありますから、例えばsenbismポップアップショップみたいな形で、いろいろなアパレルさんにsenbismの素材で服を作ってもらって期間限定販売ができたらいいなと考えています。今回の東京クリエイティブサロン日本橋さんとのコラボは柄プリントという形になりましたが、アパレルさんとのコラボなら洋服という形で届けることもできるかなと。

—こんなお相手とコラボしてみたいなどの希望があればお聞かせください。

具体的な名前は出てこないですが……我々が作ってるものは、最先端のテクノロジーでありながら、生地という何十年、何百年も続くフォーマットでもあるんですよね。今回の東京クリエイティブサロン日本橋さんとのコラボにも通じる部分ですが、いわゆる伝統的なものと革新的なもの、この組み合わせこそが日本のもの作りの強さだと思っています。なので、そういう日本らしいもの作りの姿勢をお持ちで、それを世界にも発信していきたいという企業さんといろいろなことに取り組んでみたいです。
また、senbismに関してはもっとインスピレーションを与える、感覚的なものでありたいと思っていて。世の中には撥水機能がありますとか、すごく強度がありますとか、数値で測れる機能を打ち出した素材はたくさんあるし、わかりやすいと思うんです。でも私たちはそれだけではなく、例えば洋服のデザイナーさんが生地から新しいデザインを思いついたり、それを着るとなぜか気分が上がるとか、触れた人を触発するようなものを目指している部分もあります。なのでそういうフィーリングを大切にしている人とコラボしていきたいなと思いますし、とにかくまずはsenbismの生地を触ってみていただきたいですね。

—なるほど。では日本橋でビジネスを展開している企業や店舗が東レの素材やsenbismに興味がある、触ってみたい場合はどうしたら良いですか?

我々のオフィスも日本橋にありますし、お問い合わせいただければ生地サンプルのコレクションをお見せすることが可能です。さまざまなお取り組みの仕方があると思いますので、まずはご相談をいただけると嬉しいです。

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有便堂

紙や筆を扱う文具店の有便堂さん。海外のお客様に我々の商品をプレゼンする時なんかに、和紙に素材名を書いてつけたり、ちょっとした飾りとして添えたりということに使わせてもらっています。自分が手紙を書く時なんかにも利用しています。紙を触って、その触感から文章が浮かんだりすることもあるじゃないですか。何となく我々の生地の世界と紙の世界って、目指すところが似てるなって勝手に思っています。

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