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2024.01.17

5年目のBridgineは「街に開かれたメディア」へ。多様なメンバーと未来の街メディアを語り合う。 〜『まちの編集部員になろう vol.0』リポート

5年目のBridgineは「街に開かれたメディア」へ。多様なメンバーと未来の街メディアを語り合う。 〜『まちの編集部員になろう vol.0』リポート

コラボレーションマガジン・Bridgineは2019年の立ち上げ以来、日本橋で活動する挑戦者の思いやヴィジョンを発信するとともに、「つなぎふと」をはじめ、地域に新たなつながりを育むためのプロジェクトを手がけてきました。そして、まもなく迎える5周年を前に、次なる一歩としてメディアの運営を日本橋の街にひらき、オープンな体制をつくりたいと考えています。 そしてこのたび、新たな体制作りに向けて、イベント「まちの編集部員になろう」を開催。初回は“vol.0”として、編集部の活動紹介や、下北沢の街メディアを運営する「東京都実験区下北沢」チームをゲストに迎えたトークセッションをメインに、さまざまなバックグラウンドを持つ参加者の皆さんと交流しました。今回はそのイベントの模様をお届けします。

参加者それぞれにとっての日本橋

会場は日本橋・むろまち小路にある「+NARU」。“好奇心で動き出す、日本橋のオープンスペース”をテーマにし、日々多くのイベントが開催されるこの場所は、Bridgineが目指す“開かれた編集部”が集まるのにもぴったりな場所です。この「+NARU」に、19名の参加者とBridgine編集部メンバー、そして今回のゲスト「東京都実験区下北沢」の運営チーム合わせて30名近くが集まり、イベントはスタートしました。

まずはアイスブレイクとして、自己紹介タイム。Bridgine編集部の3人も普段どんな役割を担っているかをお伝えしつつ、参加者の皆さんにもテーブルごとに自己紹介をしてもらいました。日本橋周辺で働いている方、+NARUで別のイベントを開催している方、メディア運営に興味がある方などが、多様な関心軸を持って集っており、それぞれの視点で日本橋という街に着目して話をしていたのが印象的でした。

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各グループでは活発なコミュニケーションをとる姿が。イベントが終わる頃には、グループラインを作っていたチームも。

参加者同士のアイスブレイク後は、三井不動産株式会社 日本橋街づくり推進部の新井章希さんからBridgineの紹介へと移ります。

5年目のBridgineが目指しているもの

「Bridgineを知っている人〜?」という問いかけから始まりましたが、挙手は片手で数えられるほど。編集部にとっては少し寂しい結果となりましたが、「今日を機に、Bridgineを楽しんでほしい!」と、紹介する新井さんに熱が入ります。

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三井不動産 街づくり推進部の新井さん。日本橋の街の人々や美味しいお店を知り尽くす、日本橋通の一人。

2019年にスタートしたBridgineでは、日本橋で活動するチャレンジャーたちの思いやヴィジョンを発信し、街に新たなつながりを育むことを目指してきました。そんな編集部がこれから先に目指すのは、“単なる情報発信メディア以外の役割も担うこと”だと新井さんは語ります。
これまでも、街のプレイヤー同士をつなぎ、日本橋の新しい手土産を作る取り組みとしてスタートした「つなぎふと」プロジェクトなどを推進してきましたが、今後は街のコラボレーションの輪を拡大しながら、それをより持続的なものにいきたい。そのためにBridgineの関係人口を増やし、地域コミュニティのハブとしてのメディアに昇華させたい、という思いを参加者に伝えました。

Bridgine資料
つなぎふと資料

日本橋のコラボみやげプロジェクト「つなぎふと」はBridgineがプロデュースしている

新井さんに続き登場したのは、編集部の原田優輝さんと丑田美奈子さん。お二人は現在の記事の制作工程や、今編集部が悩んでいることをシェアしてくれました。その中で原田さんが参加者に問いかけたのは、「どんなメディアだったら関わってみたいか?どんな役割を担うことができそうか?」ということ。「企画、インタビュー、ライティングをはじめメディア運営やコンテンツ制作にはいろいろな“関わりしろ”があるはず。ぜひ形にとらわれず自由に自分が関わりたいパートを探して欲しい」と、今日のイベントを通して考えてもらいたいことについて話しました。

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「Bridgine」編集部の原田さん(右)と丑田さん(左)。企画・編集・ライターと、多くの役割をこなす

「東京都実験区下北沢」より 〜チャレンジに寛容な街だからこそ、“実験”を切り口に

続いて登壇したのは、今回のゲストスピーカーである下北沢の街メディア「東京都実験区下北沢」の運営チームより、角田匡平さん。同メディアの紹介や、目指す形を語ってくれました。

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京王電鉄株式会社 開発事業本部に所属する角田さん。ミカン下北の運営責任者も務めている

“下北沢を舞台にチャレンジングな取り組みを仕掛けるプレイヤーに密着する”メディアである東京都実験区下北沢。2022年3月の誕生以降、“実験”を切り口に、下北沢で起きた数々の実験の裏側にあるストーリーや人に注目しながら、さまざまな事例を発信しています。

「正解を決めつけず、自由なトライをしやすい街・下北沢だからこそ、やりたいことをもっと気軽に実験し、新しいことを楽しんでほしい。そんな思いから“実験”をキーワードにしている」と話す角田さん。メディアの運営だけでなく、実験が生まれやすい土壌を作るために、街で実験をしたい人たちが集まる「下北妄想会議」という場を設け、そこでやろうと決めた実験を実装するために「studio YET」というプログラムも用意し、その一連の流れを東京都実験区下北沢で発信しているとのこと。

実験区投影資料

下北沢での“実験”を取り巻くエコシステム。この中でメディアが重要な役割を果たす

しかし最近、角田さんはある変化に気づき始めたと言います。それは、「実験を考えている人がその構想段階でメディアに出ることで、やりたいことが言語化・整理されて、実行に向けて背中を押されるケースが増えている」こと。取材→チャレンジの実行という流れは、当初の編集部の想定にはなかったものの、メディアが果たす面白い可能性を示しており、「今後も街で実験を仕掛けるさまざまな人がクロスオーバーするハブでありたい」と結びました。

街メディアに共通する魅力と課題

双方の紹介を終えたところで、東京都実験区下北沢の編集長を務める雨宮崇人さんも合流し、「地域とメディアのこれから」と題したトークセッションへ。取材先の見つけ方や、街の魅力を伝えるために意識していること、苦労していること、やりがいなど、話題は多方面に広がりました。

中でも盛り上がったのは、街のプレイヤー同士の繋がりについて。街は違えど、取材をする過程で交流の深さや広さに驚かされることも多いとのこと。

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「東京都実験区下北沢」編集長の雨宮さん。下北沢には「失敗を否定しない。多様であることに誇りをもっている」という特徴があると教えてくれた

「日本橋では三四四会(日本橋料理飲食業組合)が良い例で、一人に話を聞くと、あそこの店はこんな取り組みをしているよ、と教えてもらうことも」(原田さん)
「日本橋三越本店では、イベントの際に老舗の飲食店同士がコラボレーションしているお弁当を売っていることもあり、それを見るたびに街の中での結びつきの強さを感じる」(新井さん)
「下北沢では“実験”を軸に取材をしているけれど、街の人に“あの人がこんな実験やっているよ”と教えてもらうこともある」(角田さん)
「妄想会議で新たにつながった人たちのアイデアから、街を舞台にした実験が生まれるとわくわくする」(雨宮さん)

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取材先の人が「これをやりたい」と宣言し、それが実現したときにまた取材にいく、という循環もできてきてうれしいと語る角田さん

また、今感じている課題についても、双方似ていることが判明しました。それは街の情報の伝え方や、メディア自体の知名度の上げ方についてです。

「下北沢という街の中では徐々にメディアの存在を知ってもらえているという感覚があるが、下北沢以外の人にも認知してもらいたい」(雨宮さん)
「今のようなインタビュー記事だけでなく、もっとタイムリーに発信していけるようなものがあるといいかもしれない。今後はSNSなども強化していきたい」(角田さん)
「日本橋って格式高くて近寄り難い…というパブリックイメージがあり、それを和らげ親しみやすくしていくこともメディア創刊の理由の一つだった。実は日本橋ってこんな面白い活動をしている人がたくさんいるよ!といかに伝えるか、今後一層追求していきたい」(丑田さん)
「今までは基本的にこちらからの声がけで取材をしていたけれど、5年目はもっとプレイヤー側から“取り上げてほしい!”と手を挙げてもらえるようなメディアになっていきたい」(新井さん)

参加者からは「街でどんなイベントが開催されているかをタイムリーに知りたい」「日本橋はたしかに近づきにくいから、もっと街のプレイヤーを身近に感じられる情報があるといい」との意見も。街に関わりやすくするための情報を提供できると、街のことを“自分ごと”としてとらえてもらえる可能性が高そうです。

読みたい記事、参加したい企画って?

2つのメディア編集部が本音を語り合うトークセッションを経て、イベントの最後はグループごとに「こんな街メディアがあるといい」「街メディアに関わるとしたらどんなことをしてみたいか?」を発表し合うグループワークへ。

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グループワークでは、ポストイットにそれぞれがアイデアを書き、まずはグループ内で発表。そこから新たなアイデアにつながっていくことも

グループワークで出た意見の一部を紹介します。

◆他の地域メディアと差別化するため、たとえばメディア上で記事を完結させず「続きは日本橋で!」とするなど、実際に来街するきっかけになるような伝え方をしたい
◆街のお祭りやイベントに関わっている中心人物を追いかける(72時間密着ドキュメントのような企画)
◆街の相関図をショートインタビューと一緒に構成してみたい
◆お店や企業の“数珠つなぎ”企画(取材先から、次の取材先を紹介してもらう)
◆子ども新聞記者のように、子どもがお店や企業にインタビューしてみる
◆街のプレイヤーやワーカーが参加できるランチ会を開催して、その様子を記事にする

などなど、編集部だけでは思いつかないようなアイデアがたくさん出てきました。そのどれもが、日本橋という街への関心の高さや愛に溢れた貴重な意見でした。

編集部を街に開いていくために

どんなコンテンツがあったら面白いのか。街に開かれたメディアになるには何が必要なのか。参加いただいた皆さんから、多くのヒントやアイデアを得ることができた「まちの編集部員になろう vol.0」。最後にはLINEのオープンチャットで参加者のコミュニティが作られ、次回の活動に向けたつながりが生まれました。
Bridgineはオープンなメディアとして、街のコラボレーションやチャレンジのハブになることを目指し、試行錯誤を重ねていきます。「まちの編集部員」もまだまだ募集中。不定期にイベントも開催していきますので、次のお知らせをお楽しみに。5年目のBridgineにぜひご期待&ご参加ください!

取材・文:古田啓(Konel) 撮影:岡村大輔

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