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2020.02.26

マンダリン オリエンタル 東京×箔座のコラボレーション。 日本の伝統の技、金箔を活かした「桜メニュー」。その制作背景に迫る。

マンダリン オリエンタル 東京×箔座のコラボレーション。 日本の伝統の技、金箔を活かした「桜メニュー」。その制作背景に迫る。

3月15日(日)より開催される、日本橋の春の恒例イベント「SAKURA FES NIHONBASHI/OFF TO MEET」。その開催にあたり、2005年に日本橋に開業したマンダリン オリエンタル 東京と、2010年より日本橋に店舗を構える「箔座」がコラボレーションメニューを開発。日本の金箔の魅力を広く発信していきたいという箔座の想いから実現した、コラボレーション商品について、その制作背景をレポートします。

「日本の金箔の魅力を日本橋から広めていきたい」。その想いからスタートしたコラボレーション。

2019年11月に行われたBridgineでの箔座日本橋への取材。Bridgine編集部はその取材の場で、箔座の代表取締役社長 高岡美奈さんからこのような想いをおうかがいしました。

「日本橋の企業さんや店舗さんとコラボレーションを生み出して、金箔の魅力を広めていきたいのです。」

2010年に開業した「箔座日本橋」は開業当時から、「にんべん」や「榮太樓總本鋪」といった日本橋の老舗企業とのコラボレーション商品を多く開発しており、現在も店舗にはそうした商品がずらりと並んでいます。金沢から進出し、このように日本橋に根を張りながら、店舗を運営してもうすぐ10年。節目の年を迎えるにあたり、地域との共創を通して金箔の可能性をさらに広げたい-。高岡社長にはそのような想いがありました。

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金箔には「金運・幸運・魔除け」という意味があり、箔座の金箔は国宝級の建造物にも多く使用されている。また、箔座にはあらゆるタイプの料理用金箔が揃う

このご相談を受けBridgineの編集部では、過去ご取材をさせていただいたマンダリン オリエンタル 東京さんとの相性がよいのでは、と考えました。マンダリン オリエンタル 東京 と言えばインターナショナルな高級ホテル。しかし、そのコンセプトは「Sense Of Place」。その土地の文化や歴史との調和を重んじる、「地元密着」な側面をもつホテルです。「地元の老舗企業や地域コミュニティとの活動にも積極的なマンダリンさんであれば、日本橋との歴史的な繋がりがあり、日本の文化を引き継ぐ箔座さんとのコラボレーションを快く受け入れてくれるはず。」そうした考えから、編集部はマンダリン オリエンタル 東京のマーケティングディレクター藤川三智子さんを訪ねました。

日本橋で毎年春に開催される「SAKURA FES NIHONBASHI」で提供する「桜メニュー」でのコラボレーションをご相談すると、「日本橋の店舗とのコラボレーションはとても良い取り組みですね。是非進めましょう。」と、その場でプロジェクトのスタートが決まりました。

金箔に纏わる文化と技術に触れる。

コラボレーションメニューの開発が決まり、早速初回のミーティングが実施されました。箔座日本橋の店長北嶋章子さん、マンダリン オリエンタル 東京 総料理長のダニエレ カーソンさん、料飲部長の内坂徹さん、藤川さんが参加し、まずは食用の金箔のレクチャーから始まりました。

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箔座の金箔商品を手に取り、説明を聞く総料理長のダニエレカーソンさん(右)、料飲部長の内坂さん(左)

箔座では「縁」という料理用金箔のシリーズが展開されています。自然由来の材料を使い、古来の金箔づくりの製法を継承する商品シリーズです。金を和紙に挟み、1/10,000mmという均一な薄さになるまで打ち延ばしていく職人技に支えられたこの金箔。その手の込んだ加工方法の説明にダニエレさん・内坂さんも興味深く耳を傾けていらっしゃいました。

そしてまた、箔座では既製品の料理用金箔の他、オーダーメイドでの加工にも対応しています。北嶋さんが持参されたこれらの様々なサンプルを元に、ダニエレさんの中でメニューのイメージが膨らんでいきます。

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オリジナルの形への加工も可能。当日はマンダリン オリエンタル 東京 ペストリーシェフのステファンさんが蝶好きという情報を元に、箔座北嶋さんが蝶型の金箔を持参した

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オリジナルの形や細かい文字まで表現が可能

金箔のサンプルを見ながら、当日、ダニエレさんの口からはマカロンなどスイーツでの展開や、コース料理の中のメニューでの展開など、多様なアイディアが飛び交いました。様々な形の金箔のサンプルを持ち帰り、メニューを検討のうえ、提案をいただくこととなりました。

試行錯誤をしながら最適な形を探る。素材を活かすメニューづくり。

初回打ち合わせから約2週間。マンダリン オリエンタル 東京 側からメニューの提案が行われました。提案されたメニューは「ロールケーキ」と「リゾット」。

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メニューの決定を行った2回目のミーティング

どうしてこの2メニューを考えられたのかをうかがうと、ダニエレさんは「もともとロールケーキに抹茶を使用しています。日本を代表する食材である抹茶と、日本の伝統的な技でつくられる金箔。この2つの組み合わせには必然性があるように思いました。リゾットについては私の故郷であるイタリアに、サフランのリゾットに金箔を添えたものがあって。そのレシピを参考にしてみたんです。」と語ってくれました。

メニューの提案を聞いた箔座の常務取締役の大矢真咲記さん、北嶋さんも、「どちらのメニューのご提案も大変素晴らしく、ありがたいです。特に、サフランリゾットの展開は感動いたしました。(昔イタリアではサフランは金よりも高価とされていたということをうかがって)高級感のある今回のマッチングは、金箔の存在をいっそう価値あるものとして表現いただけるものになると感じ、大変うれしく思います。」とお話されていました。 そうして、ロールケーキでは桜の形の金箔を、リゾットでは四角い金箔を使用する方針で決定し、早速試作品づくりに入ることとなりました。

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当初使用する予定だった型取りの金箔(右真ん中)

しかし、ロールケーキの試作品づくりを開始すると、ひとつの問題が判明。料理のもつ熱や湿気で桜の形が収縮してしまい、フォルムを崩してしまうことがわかりました。金箔の形の美しさを維持しながら料理を引き立たせたい-そうした想いのもと、別方法での利用を検討することに。そして試行錯誤の結果、ロールケーキへ桜の形の金箔をのせるのではなく、チョコレートの部分に金箔をあしらう形に方針を変更することとなり、無事最終形が完成しました。その後リゾットメニューも完成し、最終的なコラボメニューの展開内容が確定しました。

3月15日~4月5日の間販売されるオリジナルコラボメニューが完成。

完成したメニューはマンダリン オリエンタル 東京1Fの「ザ マンダリン オリエンタル グルメショップ」で提供される「金箔をあしらった桜ジャムと抹茶ロール」と38Fイタリアンダイニング ケシキ で提供される「金箔と桜えびのリゾット ミラネーゼ」(※1)。

※1:「金箔と桜エビのリゾット ミラネーゼ」はコースメニューの一部として提供されます。

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ロールケーキの上のチョコレートに上品に金箔をあしらう形となった

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サフランを使った「金箔と桜えびのリゾット ミラネーゼ」

「濃厚な抹茶が香るクリームとしっとりとした生地に上品に金箔をあしらったロールケーキは日本茶にもよく合います。日本の方、海外からいらっしゃる方、幅広い方に召し上がっていただきたいですね。リゾットについてはイタリア北部の伝統料理であるサフランリゾットをアレンジし、箔座さんの金箔をあしらった一品です。イタリアの日本のコラボレーションとも言える一品になっています。こちらも是非多くの方に味わっていただけたらと思います。」とダニエレさん。

箔座北嶋さんからは今回の取り組みを振り返り、「金箔は、使われる素材との相性により、さまざまな表情を見せる素材です。今後も、ぜひまたご一緒させていただき、マンダリン オリエンタル 東京 様の感性で、箔の新たな美しさや魅力を引き出していただけましたら大変うれしく思います。おめでたい節目の機会や、クリスマス、バレンタインなど、あらゆる季節イベントの折にも、マンダリン オリエンタル 東京 様をはじめ、日本橋の店舗様とも“共に日本橋を盛り上げる!”という想いのもと、ぜひご一緒させていただきたいと思っております。」とコメントをいただきました。

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「Collaboration Magazine Bridgine」と日本橋の街とクリエイターの共創プロジェクト「nihonbashi β」では、街の中でのコラボレーションプロジェクトを今後も推進予定です。コラボレーションご希望の企業・店舗の方々は是非お問い合わせください。

取材・文:坂本彩(Bridgine編集部) 

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