Report
2023.04.14

都会の真ん中でゆるやかに人が集うオープンスペース「桜のれん」で起きたこと。−SAKURA FES NIHONBASHI 2023 イベントレポート

都会の真ん中でゆるやかに人が集うオープンスペース「桜のれん」で起きたこと。−SAKURA FES NIHONBASHI 2023 イベントレポート

3月17日(金)から4月9日(日)の間、「SAKURA FES NIHONBASHI 2023」が開催され、好評のうちに終了しました。今年は数年ぶりに行動制限のない状況で開催され、多種多様なイベントをメインに構成されたお祭りは、多くの来場者で賑わいました。そして今回のメインシンボルでありイベントの会場にもなっていたのが、16枚の桜色の大判のれんが掲げられたオープンスペース「桜のれん」。自然と人々が集い、コミュニケーションのハブとなっていたこの場所でどんなことが起こっていたのか? レポートで振り返ります。

「桜のれん」にこめられた想い

コロナ禍を経て久しぶりに集まる喜びを分かち合いながら、日本橋の街の“人のつながり”を体感できる場所を作りたい−。
そんな企画チームの想いからスタートし形になったのが「桜のれん」と名付けられたオープンスペースです。SAKURA FES NIHONBASHI 2023のメイン会場のひとつ、COREDO室町テラス 大屋根広場に設置された桜のれんは、幅約13m、高さ約4mの大型インスタレーション。16枚の大判のれんはソメイヨシノやおかめ桜、河津桜など、日本橋で花を咲かせる多様な品種の桜にちなんだ桜色で、風に舞う花びらをイメージしたデザインになっています。中央にはドーナツ状のカウンター、のれんのふもとには円形のベンチが設置され、思い思いの過ごし方ができるように設計されました。

23_0401_043

全体デザイン・演出は「Konel」、のれん制作は「中むら」、造作物の制作・施工は「博展」が担当。何度も色・素材・レイアウトの議論がなされこの形に行き着いた(photo:前川裕介)

夜はライトアップもされ、日本橋を表す「雅」(文化の優雅さ)、「賑」(日本橋の賑わい)、「結」(結束力・つながり)、「発」(新しい文化の発信)の要素をイメージしてライトの明滅パターンをプログラム。静かに眺めながら日本橋の夜を楽しめるような仕掛けがされていました。

23_0401_097

夜の桜のれんはまた違う顔を見せる。のれんの配置がランダムなのは「個性豊かな街のプレイヤーがそれぞれの方向を向いていながら、全体として美しく調和していることを表したかった」という企画チームの想いから(photo:前川裕介)

SAKURA FES NIHONBASHI 2023の幕開けを彩ったPOP UP バー

3月17日、SAKURA FES NIHONBASHI 2023の初日は「東京アメリカンクラブ日本橋」によるポップアップBarでスタート。普段は会員しか入ることのできない会員制社交クラブが1日だけのバーを開くということで、会場には多くの人々が。「東京アメリカンクラブ日本橋」のスタッフも気合い十分で、こだわり抜いたお酒とフードメニューは仕事帰りのワーカーを中心に来場者に大変好評でした。

unnamed
03のコピー

そして、桜色に照らされるのれんの下、フラメンコギターの須田隆久さん・パルマの上籔よう子さんが登場すると、会場の盛り上がりは最高潮に。春にまつわるスタンダードナンバーに続き、有名曲「ヴォラーレ(VOLARE)」が流れると、一緒に歌い踊り出す人々も。“人”が主役のSAKURA FES NIHONBASHI 2023 らしい賑やかな幕開けです。

07のコピー

人気イベント「ニホンバシ桜屋台」のサテライト会場にも

3月25日、26日には日本橋の人気飲食店らが約30店舗集まった「ニホンバシ桜屋台」が開催。
会場の福徳神社周辺は、あいにくの雨にも関わらず約13,000人もの人々が訪れました。日本橋らしい老舗の名物メニューをはじめ、今年は広域エリアから初出店する店舗も多く、“日本橋の食”の豊かさを改めて感じるイベントとなりました。

10のコピー
25のコピー

桜のれんはこの2日間、桜屋台のサテライト会場に。円形カウンターはお客さん同士の交流を深め、あちこちで楽しげな会話と笑い声が響いていました。

IMG_2055 2

(編集部撮影)

日本橋のさまざまな“顔”が登場した「茶の湯スタンドNIHONBASHI」

日本橋の多彩さは食の分野だけにとどまりません。この街の幅広い魅力を人々に伝えるべく企画されたのが4月1日、2日の「茶の湯スタンドNIHONBASHI」でした。
茶の湯とは茶道の前身であり、お茶だけではなく亭主と客人とのコミュニケーションが重視されていたと言われています。そんな茶の湯の考え方をヒントに、“1杯のお茶を飲む間に、街の人々と気軽に交流できる場を作る”場として、桜のれんが活用されたのです。
日本橋のさまざまなプレイヤーたちを亭主に、桜のれんで催されたイベントの様子をそれぞれご紹介します。

茶の湯スタンド

この企画に協力いただいたのは日本橋のお茶の老舗「山本山」と、器のサブスクリプションサービスを手掛ける横山町の「TOIビル(CRAFTAL)」。両者のコラボにより本格的なお茶スタンドとなった(写真はイメージ)

32のコピー

来場者は好きな湯呑みとお茶を選び、セルフでお茶を楽しめる

「水引で桜色のアクセサリーを作ろう」

IMG_1933

「香紡縁」による水引でアクセサリーを作るワークショップ。根付やヘアピンなど可愛らしい小物を簡単に作るイベントは、幅広い層の人々に人気だった(編集部撮影)

「秋田を味わうおにぎりランチ」

31のコピー
30のコピー

秋田と日本橋をつなぐ、おむすびとカルチャーの拠点「ANDON」によるおにぎりセットの限定販売。お茶とよく合うおむずびは1時間で完売。温かな日差しの中、のれんの下でランチする人も多かった。

「絵本を楽しむ冒険~ぐりとぐらのウラ~」

(左のお客さん顔ぼかす)38のコピー

日本橋・兜町のBook Lounge Kableで人気の、「はじまり商店街」による絵本のワークショップ。「ぐりとぐら」を題材に、みんなで妄想したり考察したりする時間はまるで青空教室のよう。親子で楽しむ方も多数。

「分身ロボットOriHimeと過ごすティータイム」

(顔ぼかす):40のコピー

外出困難な従業員が分身ロボット「OriHime」を遠隔操作しサービスを提供する話題のカフェ、「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」が出店。オリジナルコーヒーとヴィーガンマフィンも提供され、お店の雰囲気が味わえる演出に。「OriHime」との交流が初めての方も多く、未来のカフェが知られるきっかけになっていた。

「『マイ茶碗』を作ろう」

45のコピー

「井澤コーポレーション」による、美濃焼の茶碗に手書きイラストを転写するワークショップ。皆どんなモチーフにするか悩みながら、世界にひとつだけのオリジナル茶碗を作っていた。手作りすることで器や食への愛着がわく“器育”にもつながる企画だ。

「日本橋の街を描くライブペインティング」

47のコピー
48のコピー
50のコピー

日本橋のアートホテル「BnA_WALL」監修のもと、円形カウンターをキャンバスに壁画アーティスト・小田佑二が日本橋の美しい街を描いた。会場では「これは三越だね!」「これは麒麟像では?」などの会話が聞かれ、カウンターを何周もして小田さんを追いかける方も。完成時には自然と拍手が上がったのも印象的だった。

「つなぎふと」の期間限定ショップも登場

27のコピー

日本橋のプレイヤー同士のコラボレーションで生まれた3つの新しい食みやげ「つなぎふと」。 桜のれんはその期間限定ショップの会場にもなった。お茶と合わせて試食する方も多く、ここでしか買えない日本橋みやげはどれも好評。作り手であるパティシエや担当者も訪れ、お客さんとの交流の場になっていた。

お祭りを締めくくる夕暮れ時のアコースティックライブ「SAKURA MUSIC NIGHT」

4月7日。桜のれんの最終日は人気アーティスト「さらさ」によるアコースティックライブが開催されました。しかし当日はあいにくの雨と風の予報。決して良いコンディションとは言えない中さまざまな調整がなされ、結果的には多くのお客さんと素敵な夜を分かち合う時間となりました。「さらさ」の周りは春の花とあたたかな光に包まれ、雨もまた彼女の透明感やアンニュイな雰囲気を引き立たせる演出になっていたように感じました。
会場では「CRAFTROCK BREWPUB & LIVE」による桜フレーバーのビールも販売され、都会の真ん中の開放的なライブハウスのような空間に。素晴らしいパフォーマンスとともに、桜のれんは幕を閉じました。

DSC04646

photo:上田昌輝

DSC04687

photo:上田昌輝

DSC04564

photo:上田昌輝

曖昧な境界“のれん”が生み出した、ゆるやかなつながり

人々が集いつながる場として設けられた「桜のれん」には、SAKURA FES NIHONBASHI 2023の期間中、企画チームの予想を超える数の人々が訪れました。平日は日本橋のワーカー、休日はファミリーや友人同士など、その客層もさまざま。ある時は休憩スペースとして、ある時は飲食店として、フォトスポットとして、そしてまた人と人が語らう場としてー。その真ん中に風にランダムになびく“のれん”があったことで、空を見上げながらのんびりと過ごす人が多かったのも印象的でした。
古くから日本橋の街を彩り、曖昧な境界を作り出し、人々を迎え入れてきた“のれん”。桜のれんはまさにアフターコロナの新しくなった2023年の日本橋に「ようこそ」と歓迎するような存在になっていたのではないでしょうか。
※関連記事:「のれん」に宿る大切なこと。現代に求められる“日本のスタイル”を伝えるのれんプロデューサーの挑戦。

来年のSAKURA FES NIHONBASHI はどんな形になるのか?ぜひ次の春を楽しみにお待ちください。

04のコピー

構成・文:丑田美奈子(Konel) 撮影:岡村大輔 (記事トップ写真:前川裕介)

Facebookでシェア Twitterでシェア

TAGS

Related
Collaboration Magazine Bridgine