宇宙ビジネスの未来を子どもたちの手に。 「YAC東京日本橋分団」の宇宙ミッションツアーに潜入!
宇宙ビジネスの未来を子どもたちの手に。 「YAC東京日本橋分団」の宇宙ミッションツアーに潜入!
2021年12月10日から26日にかけて開催された、“宇宙の仕事と出会えるフェス”「HELLO SPACE WORK! NIHONBASHI」。宇宙飛行士や宇宙ベンチャー、はたまたファッションデザイナーから弁護士までが一堂に会したスペシャルトークセッションをはじめ、JAXA宇宙飛行士が残した仕事にまつわる名言の数々を展示するエキシビションなどが実施されました。宇宙ビジネスの企業/プレイヤーが集結する日本橋だからこそ実現できる、多種多様なプログラムはSNSでも大きな話題に。今回Bridgine編集部は、そのコンテンツのひとつである親子向けのワークショップ「日本橋・宇宙ミッションツアー」に潜入。応募開始わずか数時間で定員に達した人気ツアー当日の模様をお届けします。
日本宇宙少年団の新規分団が、日本橋に誕生!
「日本橋・宇宙ミッションツアー」を主催した日本宇宙少年団(YAC)は、次世代を担う子どもたちを対象にした、宇宙および科学に関する教育実践活動や国際交流を行う公益財団法人です。1986年に設立され、現在理事長を務めるのは日本で2人目の女性宇宙飛行士として知られる山崎直子さん。その就任後、初めての新規分団(東京では14年ぶり)として誕生したのが「YAC東京日本橋分団」。日本橋を舞台にコミュニティ活動を行う「宇宙コミュニティ そらビ」が運営し、宇宙の最先端をワクワク学べる“ホンモノ体験”を提供していくとのことです。
子どもも大人もワクワクさせる宇宙ビジネスを、「ミッションツアー」で体験
今回のワークショップには、午前・午後の部それぞれ10組の親子が参加。「宇宙ベンチャーのお仕事を調査しよう!」をテーマに、日本橋にある宇宙ベンチャー企業を調査団としてまわりながら、宇宙に関する様々なお仕事について学ぶというミッションが与えられます。また、各ミッションの最後にクイズが出題され、正解者にはレアなノベルティがプレゼントされました。
司会進行役は、分団長でありながらJAXA研究開発プログラム「J-SPARC」のナビゲーターを兼任し、宇宙キャスター®︎として商標登録もされた“宇宙のおねえさん”こと榎本麗美さんが担当しました。冒頭のクイズから前のめり気味に回答する子どもたちの熱量からも、宇宙ビジネス/宇宙ベンチャーがいかに魅力的で可能性にあふれたフィールドなのかを実感します。
Q&Aに答える調査団。NASAなどの宇宙関連アイテムを身に着けた参加者も多く、その豊富な知識にも驚かされた
J-SPARC
室町三井ホール&カンファレンスで行われた最初のミッションでは、榎本分団長とも縁の深い「J-SPARC」のアシスタントをしている渋谷洋介さんが登壇。宇宙ベンチャーとは何か?といった基礎知識から、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の問題まで、世界の宇宙ビジネス事情も交えながらプレゼンしてくれました。驚かされたのは、日本国内にはおよそ50社の宇宙ベンチャーが存在し、そのうちの多くが日本橋周辺に拠点を置いているということ。子どもたちも興味津々でお話を聞いていました。
いよいよ「日本橋・宇宙ミッションツアー」に出発!
続いて日本橋三井タワー1Fアトリウムに移動し、2022年中に月面着陸を目指しているというispaceのランダー「HAKUTO-R」の実寸大模型を鑑賞(※現在は展示終了)。間近に模型を見ることで、遠いと思われた月が近くに思えてくるようで、参加者たちも月に想いを馳せながらじっくりと観察していました。
アクセルスペース
つづいて一行は中央通りを渡って日本橋本町の「Clipニホンバシ」に拠点を構える「アクセルスペース」で行われる第2のミッションへ。めったに一般の方へ公開されることがないというクリーンルームも見学することができ、子どもたちはもちろん保護者の方々も食い入るようにガラス窓の向こうを見つめていました。
日本橋中央通りを横断する調査団一行
アクセルスペースでのミッションの模様。モニター前に立つ男性がアクセルスペース取締役/CTOの宮下直己さん
「アクセルスペース」といえば、超小型人工衛星を活用した宇宙ビジネスの草分け的存在。人工衛星見学のあとは同社取締役/CTOの宮下直己さんが、「GRUS(グルース)」と呼ばれる衛星の模型を見せながら新しい時代の地球観測インフラ「AxelGlobe」について説明してくれました。2022年中には追加4機のグルースを打上げて9機体制にし、地球上の地点を毎日観測できるようにする予定とのことです。そこで得られたデータは農業管理、防災、環境モニタリング、都市計画、などへの活用が進められているようで、一言で「宇宙関連ビジネス」と言っても様々な展開と可能性があるんだと感銘を受けました。
宮下さんは「将来みなさんが宇宙ベンチャーで就職活動をするときは、ぜひうちも受けてみてくださいね!」と語りかけていましたが、今回のツアー参加者の中から、未来の宇宙ビジネスを担う子どもたちが出てくるかもしれません。
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「KIBO宇宙放送局」について説明するバスキュールの南郷瑠碧子さん
そして一行は再び室町三井ホール&カンファレンスに戻り、最後のミッションへ。青いツナギを纏った「バスキュール」のプロデューサー、南郷瑠碧子さんが「KIBO宇宙放送局」での取り組みについて紹介しました。KIBO宇宙放送局は、国際宇宙ステーション(ISS)にある日本実験棟「きぼう」内に開設した、宇宙と地上を双方向でつなぐ世界唯一の放送局。これまでに宇宙の初日の出を地球から眺める「THE FIRST SPACE SUNRISE」や、大人気漫画『ONE PIECE』とのコラボ特番といった、宇宙からのリアルタイム配信を成功に導いています。
地球型のボールを使って宇宙⇔地上の通信を疑似体験
ミッションでは地球を模したボールを使って、KIBO宇宙放送局の通信の仕組みを疑似体験するアクティビティに挑戦。バスキュールのスタッフが銀ピカの衣装で衛星に扮するなど、全力で子どもたちに楽しんでもらおうとする姿が印象的でした。中でも、KIBO宇宙放送局の開局特番で一般の人たちからKIBO=希望(好きなこと、やりたいこと、なりたいものetc)の動画を募集し、国際宇宙ステーションのディスプレイから登場してもらったリレープロジェクト「KIBO RELAY AROUND THE EARTH」のハイライトムービーは、RADWIMPSの楽曲「ココロノナカ(Complete ver.)」と相まって映画のように感動的。参加者全員の胸が熱くなる締めくくりとなりました。
KIBO宇宙放送局のYouTubeチャンネルより、「KIBO RELAY AROUND THE EARTH - music by RADWIMPS ココロノナカ(Complete ver.)」
ミッション終了後は、榎本分団長とみんなで記念撮影。子どもたちにとって忘れられない日になったことでしょう
「宇宙を仕事にすること」はもう夢じゃない
日本橋の宇宙ビジネスが凄いことになっている――という話はBridgine編集部でも取材でよく耳にするお話でしたが、今回ミッションツアーに同行したことで、「宇宙を仕事にすること」はもう遠い未来の出来事ではないのだと肌で感じました。今回14年ぶりに新規分団が立ち上がったのも、「宇宙の街・日本橋」としてのパワーや勢いが後押しとなったことは間違いないでしょう。Bridgineでは、今後も宇宙ベンチャーとYAC東京日本橋分団の活動に注目していきます。
なお、YAC東京日本橋分団は新たに入団するメンバーと共に4月頃から本格活動を予定。これからも宇宙にまつわるイベントやワークショップを不定期で開催するそうなので、ぜひ公式サイトやSNSをチェックしてみてください。
取材・文 : 上野功平 撮影 : 岡村大輔
YAC東京日本橋分団
公益財団法人日本宇宙少年団(YAC)の理念のもと、宇宙に関する「ホンモノ体験」を提供する分団。東京では14年ぶりに新規誕生した分団となり、今までのYACの活動に加えて、新時代のYACの活動を提案し、新たな活動拠点としてあらゆる機会を提供していく予定。東京日本橋分団の目標は、「分団メンバーが宇宙に行くこと」。