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2022.03.11

和と洋、伝統と革新をつなぐ、“あんこ”入りヴィーガンクッキー【つなぎふと TEAM B】「日本橋あんサンブル」商品紹介

和と洋、伝統と革新をつなぐ、“あんこ”入りヴィーガンクッキー【つなぎふと TEAM B】「日本橋あんサンブル」商品紹介

日本橋の食プレイヤー2組と、日本橋にゆかりのあるクリエイターの3者によるコラボレーションで、街の新しい食みやげをつくるプロジェクト「つなぎふと」。日本橋日月堂、ovgo B.A.K.E.R、MIDORI.soが参加するTEAM Bのコラボレーションでは、和と洋、老舗とニューカマーという対照的な2店舗の“看板の味”が調和(アンサンブル)されたお菓子が完成しました。本記事では、おみやげづくりのプロセスを振り返りながら、商品の魅力に迫ります。

「あんこを使ったヴィーガンの焼き菓子を作りたい!」 

TEAM Bのコラボレーションは、ovgo B.A.K.E.Rの代表・溝渕由樹さんの「あんこを使ったお菓子を作りたい」というアイデアからスタート。このアイデアは、昨年6月に小伝馬町へ出店したときからあたためられていたものでした。茶道を教えていらっしゃったお祖母様の影響で昔から和菓子が大好きだったことや、和菓子とヴィーガンの相性が良さそうという考えに加えて、どら焼きや金鍔、人形焼など日本橋発祥とされる銘菓にあんこが使われているものが多かったことなどが着想の背景にあったそうです。
アイデアが今まで実現に至らなかったのは、一般的なあんこに使われている砂糖に関してヴィーガン対応の確認がとりづらかったのが理由とのこと。そこで今回の「つなぎふと」プロジェクトを通して、日本橋エリアの中でこの希望を叶えてくれる相手を、と探していたところ、明治10年創業の和菓子店・日本橋日月堂が手を挙げてくれました。

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日本橋日月堂を訪れたovgo B.A.K.E.Rの代表・溝渕由樹さん(中央)と、日月堂店主の安西雅希さん(左)

「伝統を大切にしたい想いはあるものの、老舗だからといって固定概念に縛られることなく、幅広いアイデアを具体化したい」という考えを持つ日月堂店主・安西雅希さんは、今回の溝渕さんの希望を聞き、自分自身も新たなチャレンジができそうとの想いで引き受けてくれました。
そして、「あんこを使ったヴィーガンの焼き菓子を作る」という目的に向けて、二者とその橋渡しをするファシリテーターのMIDORI.soの挑戦がはじまったのです。

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TEAM Bキックオフミーティングでは顔合わせをしつつ、溝渕さん(左)と柳田さん(右)がヴィーガン仕様のあんこの要望を安西さんへお伝え。みんなで方向性のすり合わせをした。

ヴィーガン仕様のあんことは?

今回のポイントになるのは、ヴィーガンの人が食べられるあんこの製造と、出来上がったあんこのお菓子への活かし方。主に、前者を日月堂が、後者をovgo B.A.K.E.Rが担います。
あんこの主材料は小豆と砂糖。「ヴィーガンの人は精製の際に動物の骨炭を使用している一部のキビ砂糖を使うことを避けるのですが、甜菜糖を使えば、ヴィーガンの人でも食べられるあんこが出来ます」との溝渕さんの言葉を受け、安西さんは通常お店では扱っていない“甜菜糖を使ったあんこ”の試作にとりかかりました。
「砂糖の種類を変えてあんこを作ることは初めての挑戦でしたが、100年以上に渡り受け継いできた自分の店の味が出せていると思います」と試食会に安西さんが持ってきてくれたのは2種類のあんこ。一つは通常日月堂で使うあんこと同様の糖度のもの、そしてもう一つは少し糖度を高くして作ったものでした。
「ovgoさんの焼き菓子にどのような形であんこが生かされるのかを聞いてから、ブラッシュアップしたい」との安西さんの言葉を受けて、試食をした溝渕さんは「味がとてもおいしくて、どんな焼き菓子にするか迷います。あんこを混ぜ込んで焼くならば通常の糖度のもの、おまんじゅうのように包み込んで焼くならば糖度が高い方がいいかもしれません」とその場で様々なアイデアを描いていました。

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安西さんが試作した甜菜糖のあんこをチームみんなで試食。2回目のMTGにて。

あんこが活きる焼き菓子を目指して

日月堂で試作したあんこの提供を受け、ovgo B.A.K.E.Rでは焼き菓子への活かし方を検討。溝渕さんと、スタッフの柳田さんは、あんこの糖度や、質感などの特性を汲んだ上で、多種多様な焼き菓子の種類の中から、ovgo B.A.K.E.Rの看板商品とも言えるアメリカンクッキーに合わせることを決めました。
柳田さん曰く、「ほろほろとしたクッキーの中に、しっとりとしたあんこを入れることで食感の楽しさも味わえる」とのこと。安西さんが考案した糖度が高いあんこをクッキーの生地で包み込み、まるでおまんじゅうのようなフォルムに仕上がったヴィーガンクッキーは、さくさく、ほろりとした食感と、まるで羊羹のようなあんこの舌触りを楽しめると言います。

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vgo B.A.K.E.Rでの試作の様子。写真からでも甘い香りが伝わってきそうだ。

さらにもう一つこだわったのは、クッキー生地のフレーバー。「あんこの他にも“和”の食材を使うことで、今回のコラボレーションで目指した“和”と“洋”の融合の形を明確に表せたと思います」(柳田さん)と、見た目の色合いや、あんことのバランスを考え、抹茶とごまを使ったものが出来上がりました。

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パッケージデザインを担うエイドリアン・ホーガンさん(中央)も一緒に、柳田さん(右)が試作してくれたあんこ入りアメリカンクッキーを試食。クッキーの試食1回目は、フレーバー3種、あんこの入れ方も3種あり、チームみんなで意見交換。

伝統を大切にしつつも、“新しい形”をつくる日本橋らしさ

こうして出来上がったヴィーガンクッキーの名前“日本橋あんサンブル”は、ファシリテーターを務めるMIDORI.soの正心さんが名付け親。正心さん曰く、「“日本橋の新しい食みやげ”というテーマに向き合ったときに、TEAM Bのコラボ自体が日本橋らしさを体現していると感じた」とのこと。明治10年からこの地で根を張り続ける日月堂と、昨年小伝馬町に出店するやいなや、SNSなどで若者を中心に人気上昇中のovgo B.A.K.E.R。この二者の取り組みは、古くからの伝統を守りつつも、五街道の起点ゆえに全国から人・もの・ことが集まり、その交流によって新たな文化が生み出されている日本橋の街の印象と重なります。「“和”と“洋”、“老舗”と“ニューカマー”、一見対照的な立ち位置にいる二者の調和という意味合いを込めて、そして、今回のチャレンジの軸となったヴィーガン仕様のあんこにも触れる意味で“日本橋あんサンブル”と名付けました」(正心さん)。

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ファシリテーターで、商品の名付け親でもある正心さん。橋渡し役を担ってくれました。

商品コンセプトと“日本橋”がキャッチーなイラストに  

同じくファシリテーターの一員としてパッケージのクリエイティブを担ってくれたのは、馬喰横山のMIDORI.soを拠点に雑誌や書籍、広告などで活躍するオーストラリア出身のイラストレーター、エイドリアン・ホーガンさん。試食会での意見交換の様子や、今回のヴィーガンクッキーに込められたコンセプトを彼独自の目線からイラストに表現してくれました。

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エイドリアンさんは試食会に参加しつつ、クッキーやみんなの意見交換の様子をスケッチ。

“和”と“洋”の調和を表現したイラストが描かれた包装紙は、ラフ画が上がる度にチームメンバーから感嘆の声が出るほどのかわいらしさ。思わず皺を伸ばして、とっておきたくなるデザインです。さらに個包装に貼られたステッカーには石造二重アーチが特徴の日本橋の橋梁が描かれ、まさに“日本橋の食みやげ”にぴったり。包装紙もステッカーも、“日本橋あんサンブル”がお披露目となるSAKURA FESに相応しい桜のイラストや華やかなカラーで、買うときの気分を盛り上げ、もらったらうれしい、目でも楽しめるおみやげとなりました。

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ウエスタンボーイ&ガールや、武士や和装の女性がキャッチーに描かれた包装紙。SAKURA FESに合わせ、桜のイラストもあしらった。(©️2022 Adrian Hogan)

未来を見据える、食の選択肢が広がるおやつ

このようにファシリテーターを含む三者の結びつきで、TEAM Bによる日本橋の新しい食みやげ「日本橋あんサンブル」は完成しました。

ovgo B.A.K.E.Rは、「ヴィーガンを誰でもおいしく気軽に取り入れてほしい」というコンセプトのもと、環境にも体にも優しいお菓子を作っている専門店。「動物性原材料不使用だから、ベジタリアンの人はもちろん卵や乳製品アレルギーの方にも安心して召し上がっていただけます。食に関する思想を持つ方々や食に制限がある方にとっても様々な食の選択肢が増えることに繋がるようにと商品を作っている中で、今回日月堂さんに特別に作ってもらったあんこを取り入れることができ、さらにその世界が広がりました」と溝渕さんは話します。

「ヴィーガンクッキーという新しいジャンルなのに、どこか“ほっこり”する和菓子の要素を持ち合わせたイノベーティブなお菓子」と正心さんが表現するように、古き良き伝統と新しい文化が交わる街・日本橋の新たな定番手みやげへ、との想いも込めて名付けられた「日本橋あんサンブル」。
“誰でもおいしく気軽に”というovgo B.A.K.E.R流のヴィーガンマインドが、ここ日本橋からお土産として各地へ繋がり、さらに広がっていくことでしょう。
あらゆる方と一緒に楽しめるおやつのお披露目は、まもなく。3月18日の発売を楽しみにお待ちください。

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構成・文:古田 啓(Konel) 撮影:岡村大輔

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