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2021.12.24

鰹節の魅力を八百屋が作るアイスクリームで伝えたい 【つなぎふと TEAM C】にんべん×青果ミコト屋×Konel インタビュー

鰹節の魅力を八百屋が作るアイスクリームで伝えたい 【つなぎふと TEAM C】にんべん×青果ミコト屋×Konel インタビュー

日本橋の食プレイヤー2組と、日本橋にゆかりのあるクリエイターの3者によるコラボレーションで、街の新しい食みやげをつくるプロジェクト「つなぎふと」。ブリジンでは、3チームのおみやげ制作に並走し、そのプロセスを発信していきます。今回は、にんべん×青果ミコト屋×Konelの3者によるTEAM Cのキックオフミーティングと試作品制作の過程、参加メンバーへのインタビューなどをお届けします。

ちょっぴり緊張?の初顔合わせで見えた、アイスクリームという表現媒体

TEAM Cが初めて一堂に会したのは、11月16日のこと。日本橋室町のにんべん本社内の会議室でした。出席者は、にんべんの13代当主/代表取締役社長の髙津伊兵衛さん、経営企画部商品サービスグループ部長の豊田義徳さん、広報宣伝グループの中村拓美さん、小幡澄香さん、青果ミコト屋代表の鈴木鉄平さん、マネージャー/バイヤーの山代徹さん、Konelプロデューサーの加藤なつみさん。
このチームは、誰もが知る鰹節専門店であるにんべんと、今回唯一日本橋の外から参加するプレイヤーである横浜・青葉台を拠点とする青果ミコト屋のタッグ。日本橋を知り尽くした老舗と「実は今まで日本橋にあまりご縁がなかった」と言うミコト屋の新鮮な視点が合わさった時にどんな化学反応が起きるのか?そのアウトプットに注目が集まるチームです。

このTEAM Cにファシリテーターとして参加するのは、馬喰横山に拠点を置くクリエイティブカンパニー、Konel。もともとBridgineの編集を担当してきた同社は日本橋への思い入れが強く、「ぜひ参加したい!」と手をあげたプロデューサーの加藤さんを中心に、食プレイヤーの思いを形にするサポートをしていきます。

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さまざまなポジションの参加者が集まり、「つなぎふと」の3チームの中でもっとも大人数でのキックオフとなった

この日「自己紹介代わりに」と、オリジナルで製造しているアイスクリームを持参してくれたミコト屋のお二人。ミーティングの後半にはその色とりどりの商品を皆で試食し、少々緊張気味だった参加者の顔もほころびます。また試食を通して、“アイスクリームをベースにして、鰹節のさまざまな楽しみ方を提案する”という今回のコラボのアイデアイメージを共有することにもなりました。

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ミコト屋のアイスクリームの中にはにんにくやナスなど、意外な食材を使ったものも。使用する食材には規格外になった野菜や廃棄されてしまうロス食材が活用されている

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いろいろなフレーバーを試食し、「こんな食材もアイスになるのか!」と驚く参加者の皆さん

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その美味しさはこの表情からきっと伝わるはず

この試食会をきっかけに、「にんべんの商品や出汁がらを使って、ミコト屋でアイスクリームを作ってみよう」と、次回ミーティングまでに試作をすることが決定。ミコト屋・鈴木さんの「何でもアイスにできちゃうんですよ」という言葉に、どんな試作がなされるのか期待が高まります。

その後、準備期間を経て12/9に青葉台のミコト屋にてチームメンバーへのインタビューと試作品の提案が行われました。お互いを良く知り、コラボレーションのテーマを深めていくべく、Konelの加藤さんが進行役となり各社の思いや商品開発のヒントを探りました。

両社に共通する“三方良し”のマインド

加藤:まず最初に、ミコト屋のこれまでの歩みを教えてください。

鈴木:僕と山代は高校の同級生で、二人で2011年に立ち上げたのがミコト屋です。最初のきっかけは2007年にバックパッカーでアジアを旅したことで、この旅で食べ物に強く興味を持ち「農家になろう」と決意して、二人とも当時勤めていた会社を退職しました。その後僕は農業を学ぶため、千葉県のオーガニック農家に住み込みで働きました。自給自足のような生活で多くのことを学んだのですが、一方で野菜の形や見た目が悪いと安く買い叩かれる日本の農業の現実に疑問を感じるようになりました。自然が作り出す野菜は不揃いなのが当たり前なのに、世の中はスーパーに並んでいる野菜のようなきれいに揃っている“不自然”を求められる。その状況を変えるには、野菜を買う消費者側の意識を変えないといけないと思い、それができるのは八百屋なんじゃないかと考えたんです。

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ミコト屋の山代さん(左端)と鈴木さん(左から二人目)。息がぴったりのお二人、同級生というのにもうなづける

加藤:それで農家ではなく八百屋をやることにされたのですね。

鈴木:はい。作り手のストーリーを伝えるオルタナティブな八百屋を目指すことにしました。最初はキャンピングカーで農家さんを訪ねながら野菜を直接仕入れてお客さんに送るという、野菜の定期宅配サービスを始めました。その後、実店舗を持とうといろいろ物件を探し、今年2月にこの場所(横浜・青葉区)で「MICOTOYA HOUSE」という常設の青果店を開きました。駅から遠いし坂も多い、わざわざ来てもらうような場所ですが、そういう場所で僕らの世界感を味わっていただけたらと思っています。

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にんじんの葉の美味しい食べ方を伝えるのも、ミコト屋の大切なミッション(画像提供:ミコト屋)

山代:この店ではお客さんにみずから野菜を量ってもらうし、土つき野菜を触ってもらうし、新聞紙での包装もセルフサービスです。野菜との距離が近くなることで大切に思ってもらえるんじゃないかと思って、あえてこのスタイルにしました。
またここでは「KIKI NATURAL ICECREAM」の屋号でアイスクリームの販売もはじめました。お店をやると在庫を持たないといけないのでどうしてもロスが出る。その受け皿として規格外や売れ残りの野菜などを材料にしたアイスクリームを作ることにしたんです。
フードロスと言うと難しい感じがするけれど、アイスクリームだったらポップに伝わるかなというのもあって。

鈴木:たとえばにんじんが嫌いでも、アイスなら食べる子供もいますしね。ただ売るだけでなく、にんじんの葉っぱが食べられることや、どうやって育つのかも伝えます。そういう会話がしたいから、うちのアイスは蓋をして中身が見えなくしてあって、見た目ではなく商品POPとスタッフの説明から買ってもらうようにデザインしているんです。

加藤:なるほど。お客さんとのコミュニケーションを通じて野菜や農のことを伝えるしかけ作りをされているんですね。

鈴木:こんなことを言っておきながら、近い将来に蓋を開けたショーケースに変えていたらごめんなさい(笑)。でもそのくらい試行錯誤しながら、いかにお客さんに興味を持ってもらえるか、楽しんでもらえるかを日々考えています。

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MICOTOYA HOUSEは自然光がたっぷり入る、とても居心地の良い店舗。随所に見られるほっこり優しいデザインからもミコト屋らしさを感じる

加藤:ミコト屋として活動するうえで大切にしていることは何ですか?

鈴木:シンプルに言うと“三方良し”ですね。僕たちが野菜を販売するということで、社会と人々にどんな効果をもたらすか?ということは何か決める時にいつも意識しています。たとえリスクがあっても、まずは皆が幸せになる選択をしたいですね。八百屋は本当に儲からない商売ですが、続けていくことで関わる人が前向きになれるような存在でありたい。お客さんの消費行動の積み重ねで社会は成り立っているので、社会のためにもなっていくと信じています。

加藤:続いて、にんべんのご紹介もお願いします。

小幡:1699年創業の鰹節専門店で、今年で322年になる企業です。鰹節、つゆの素等の主力商品から、近年は本店に隣接した「日本橋だし場」で一杯100円の出汁を提供したり、「一汁旬菜日本橋だし場」という業態で惣菜販売を始めたりと、出汁の楽しみ方を伝えるための活動に力を入れています。惣菜に関しては、家庭で出汁をひく機会が減ってきていることから、惣菜に出汁を使うことでその味を体験いただこうと始めたものです。また、鰹節そのものだけだとお好み焼き、たこ焼き、オニオンスライスなどの一般的なレパートリーから広がらないという面もあるので、ロールキャベツなどの洋食も含めたさまざまな惣菜で表現することも重視しています。

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店舗販売、商品企画を経て、現在は広報を担当するにんべん・小幡さん(中央)

加藤:先ほど鈴木さんから「三方良し」という言葉もありましたが、この考えはにんべんにも共通するものですよね。時代に合わせて出汁の提案の形を変えていくのも、お客さんや生産者のことを考えてこその方針だと思いました。

髙津:そうですね。時代とともに変えてきている部分は多いです。今回のおみやげのプロジェクトにも関連しますが、そもそも鰹節は昔から贈答品として扱われることが多い品物でした。戦勝祈願として贈られたり、鰹節は腹側が“雌節”、背中側が“雄節”と呼ばれ一対であることから結婚祝いの定番でもありました。その後はお中元やお歳暮として親しまれてきましたが、今はそうした習慣も少なくなってきました。ならば日常のお料理で手軽に使っていただこうと「つゆの素」や「フレッシュパック」、惣菜など、形を変えてお客さまに寄り添うことで生産者が丹精込めて作った鰹節の素晴らしさを伝え、喜んでいただこうと思っています。

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にんべん代表の髙津さん(右)。百貨店や直営店等を担当する「直販事業部」の長も兼任し、商品開発に熱い思いを持つ

加藤:歴史の中で代々伝わってきた教えなどはあるのでしょうか?

髙津:特に明文化されてきたことはないのですが、先代から常々言われていたのは「実直にやる」ということですね。また、自分で心がけているのは「商いに飽きない」こと。歴史ある企業ですが、商いはつねに新しいことをやってこそ続いていくものです。飽きることなく前進していきたいと思っています。

変化し続ける街、日本橋のパワー

加藤:日本橋の街に対してはどんな思いをお持ちですか?

豊田:再開発される前から日本橋を知っていますが、この街は本当に変わりましたね。以前は日曜日なんてゴーストタウンのような状態だったのに。昔から住んでいる方からすると少々抵抗があるのでは?と思うほど、人が来る街になりました。

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商品開発の責任者である豊田さん。社員や社長の考えを取りまとめながら新商品を世に出す役割を担う

髙津:かつて街の人たちが「このままではいけない」と危機感を持って、三井不動産が主導する再開発に参加したんですよね。我々もその一員で、コレド室町1の中に日本橋本店を仮店舗としてオープンしました。そうしたら客数が二桁も伸びて、併設の日本橋だし場には1日1000人を超えるお客さんがいらっしゃり、忙しさで店員がみるみる痩せていくような状況でした(笑)。好調だったので仮店舗をそのまま継続し、元々本店があった場所に新たに「日本橋だし場はなれ」として飲食店業態もスタートさせました。

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日本橋だし場 本店(画像提供:にんべん)

小幡:私は再開発後の日本橋しか知りませんが、今は平日も週末も一日中楽しめる街になっていますよね。働く場所としても、美味しいランチスポットが多くて雰囲気も良いし、とても気に入っています。お客さんも落ち着いた方が多くて、店舗での接客も楽しかったです。

加藤:ミコト屋のお二人は、先日事務局メンバーと日本橋ツアーをしました。街の印象はいいかがでしたか?

山代:僕たち実は日本橋にはあまり馴染みがなくて、今回のように街歩きをしたのは初めてでした。“江戸から栄えている日本の中心地”という印象はなんとなく持っていたのですが、実際に歩いてみると歴史の中に現代がアレンジされている要素がたくさん垣間見られて、とても新鮮でした。途中立ち寄った「榮太樓總本鋪」では伝統的な和菓子と斬新なお菓子が同居していて、老舗のイメージがまったく変わりましたね。昔の良さを残しながら変化しつづけているのは、この街の魅力だなと思います。

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「まずは日本橋のことを知りたい」というミコト屋のリクエストで11/8に実施した日本橋ツアー。にんべん日本橋本店にも訪れ、商品の説明を受けるお二人(撮影:Adit)

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街中を歩き回り、行く先々で日本橋の味を堪能。「なんだかグルメ番組のロケみたいになってません?(笑)」とミコト屋・鈴木さん(撮影:Adit)

新しい、楽しいという感覚をつなぎ合わせていくのが商品開発

加藤:普段の商品開発ではどんなことを重視していますか?

鈴木:自分たちもワクワクするものを作ることです。そうじゃないとお客さんにも楽しんでもらえないですよね?さっき髙津さんがおっしゃった「商いを飽きない」は僕もすごく共感するところで、こちらが飽きて惰性で作っていたらお客さんに響くはずがないんですよ。食べること=楽しいことなので、今回のおみやげ開発でもそのエッセンスは入れたいですね。

加藤:ぜひそうしましょう!手に取った方に楽しい体験を提供したいですよね。にんべんの商品開発のポイントはいかがですか?

小幡:鰹節を使うことが原則ですが、さまざまな使い方を考えて提案・商品化していくことです。また、出汁の文化を伝えていくことも私たちのミッションなので、商品以外の企画も積極的にチャレンジしています。先日はFacebookでSDGをテーマにライブ配信を実施しました。初めての試みでしたが、まずはやってみよう!と。

髙津:僕自身も物をつくること、ワクワクすることが好きなんです。会社としても小幡のようにとりあえず新しいことをやる気質があると思います。飲食店業態の「日本橋だし場 はなれ」も、もとは私が思い立って1日単位で借りられるカフェをやってみたことがきっかけで、そこでの実績や反省をもとに生まれたお店です。新しい、楽しいという感覚からさまざまなことをつなぎ合わせていくのが商品開発。会社が傾くようなこと大きな事でなければ、何でもまずはやってみてトライアンドエラーをすれば良いと思っています。

鈴木:にんべんの方々は言わば300年以上トライアンドエラーを続けているってことですよね?すごいなぁ・・・。僕たちは10年ほど手探りでやってきましたが、これが300年続くかと思うとちょっとしんどいなと思ってしまいました(笑)。

髙津:いやいや、いつかは引き継いで違う方がアイスを作ることになるんですよ。その頃には創業者のAIとしてバーチャルの鈴木さんがそばに立っているかもしれないけどね(笑)

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今回インタビューを担当したKonelプロデューサーの加藤さん

山代:ちなみに、新商品は年間でどのくらい出されるのですか?

豊田:惣菜を入れると100以上になります。シーズン毎にスーパー向けのメニューを考えたり、特に直営店では不定期で多くの新商品が出ています。もう毎日のように商品登録していますよ(笑)。

加藤:今回の「つなぎふと」開発においても、今までにないトライをしていきたいですね。最後にお互いの印象と、今回のプロジェクトに期待することを教えてください。

髙津:ミコト屋さんは生産者と強くつながっていて、フードロスに真剣に向き合っているのが素晴らしいです。私たちも惣菜部門などではどうしてもロスが出てしまうので、アイスクリームをヒントに、仕組みから見直してみたいと思いました。一方で鰹節自体は“捨てるところがない”と言われておりサステナブルな万能食品です。そのあたりも今回のおみやげ作りで表現できたら良いですね。

鈴木:僕は今日お話して学びが本当にたくさんありました。にんべんさんは誰もが知ってる企業で日常的に慣れ親しんできた存在。でも一方で大きな組織だから、僕らのような小さい組織ほどはフレキシブルにできないのかもしれないと、どこかで思ってました。ところがお話を聞いていたらとんでもない!トライアンドエラーの考え方やスピード感に驚きましたし、大きな企業のトップが自らお店に足を運んで商品開発に携わる姿を見て、イメージが覆りました。しかも駅から遠いこの場所に皆さん徒歩でいらしたのでさらに驚いて(笑)。

髙津:現場からせっつかれて行けと言われたもので・・・。グーグルマップ片手にここまで来ましたよ(笑)

鈴木:そういう現場との距離感も素敵ですよね。おみやげ作りの中でも、にんべんさんの柔軟さが鰹節や出汁を通じて伝わると良いなと思います。

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TEAM Cのおみやげのテーマは、“鰹節の魅力再発見”

インタビューでのお話も踏まえ、TEAM Cのおみやげのテーマは“鰹節の魅力再発見”に決まりました。また、両者の共通点であるサステナビリティへの関心も要素として取り入れていく予定です。

そしてミーティングの後半は、この日に合わせてミコト屋が用意した3種類のアイスクリームを試食する時間に。にんべんから提供された商品や素材をアイスとして生まれ変わらせたミコト屋ならではの発想に、あちこちから感心の声が上がります。試食をきっかけに「煮物を使ったらどうなるだろうか?」「アイスのお弁当はどう?」など新たなアイデアも広がっていきました。

試作もまだまだ続きそうなTEAM C。果たしてどんなおみやげが生まれるのか? ブリジンでは3者のコラボレーションのプロセスを引き続き発信していきますので、今後の展開にもぜひご期待ください。

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第2回のミーティングから参加したデザイナーのAdit さん(Konel)もたくさんのインスピレーションを得たとのこと。パッケージの提案にも熱が入る

インタビュー:加藤なつみ(Konel)  構成・文:丑田美奈子(Konel) 撮影:岡村大輔

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