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2023.03.08

日本橋伝統の味を洋菓子に乗せて。街の“つながり”を体現する3つのサブレ。【つなぎふと TEAM A】「日本橋さぶれ」商品紹介

日本橋伝統の味を洋菓子に乗せて。街の“つながり”を体現する3つのサブレ。【つなぎふと TEAM A】「日本橋さぶれ」商品紹介

日本橋内外の事業者たちのコラボレーションによって、日本橋の新しい食みやげを開発するプロジェクト「つなぎふと」。大伝馬町に昨年オープンしたスイーツカフェ「Hiromi & Co.」と日本橋料理飲食業組合の青年部「三四四会」によるTEAM Aのコラボレーションでは、日本橋の老舗の味を洋菓子の定番・サブレと融合させたおみやげが完成しました。フレーバーは、うなぎ・すき焼き・蕎麦の3種。サブレとしては珍しいですが、日本橋の味を象徴する新しいおみやげとして、発売前からテレビで紹介されるなど話題になっています。本記事では、おみやげづくりのプロセスを振り返りながら、商品の魅力に迫ります。

商品作りには、お客さんも巻き込んで

「こんにちは!」
Hiromi & Co.や三四四会の各店舗に入ると聞こえてくるのは、「いらっしゃいませ」ではなく、こんな気軽な挨拶であることが多いように感じます。地域の人たちや常連さんはもちろん、新たなお客さんにも親しみをもって接する、心地よい距離感が両者の共通点のひとつです。
今回のつなぎふとにおいて、おそらく最も多くの人たちが商品開発に関わったのがこのチーム。その中にはこうしたお客さんも含まれていました。

たとえば、お客さんの意見がチームの後押しになったのはパッケージ開発のとき。つなぎふとのアートディレクターより出されたデザイン案をしぼりきれず、メンバーが悩んでいたとき、「それならお客様に聞いてみよう!」とHiromi & Co.の浅井さんが提案しました。日頃からInstagramでの発信とコミュニケーションを大事にしているHiromi & Co.がフォロワーに向けて「A案とB案、どっちが良い?」とその場でストーリーズを発信。短時間のうちに意見が集まり、パッケージの方向性が決まるという一幕がありました。

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「どれも良さがあるよね…」と悩むメンバーたち。打ち合わせの会場はさまざまなお店で交代で実施され、この日はうなぎ店「高嶋家」で(編集部撮影)

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画像:Hiromi & Co. Instagramより

商品開発の打ち合わせの中でも、「この味はうちのお客様は好きだと思う」「三四四会のお客様にも、Hiromi & Co.のお客様にも受け入れられるデザインはどんなものだろう?」など、常に受け手の顔を思い浮かべながら議論が進んだTEAM A。きっとその思いはお客さんにも届くはずです。

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NHKの朝の番組でも取り上げられたHiromi & Co.と三四四会のコラボ。お客さんや街と寄り添う姿勢が注目されている (画像:Hiromi & Co. Instagramより)

3種の日本橋の味をサブレで表現

TEAM Aが開発した商品は、三四四会の中でも代表的な料理ジャンルであるうなぎ、すき焼き、蕎麦の3つの料理の要素を取り入れたサブレです。

今回サブレの製造を担当するHiromi & Co.の小山さんは、パリで修行を重ねた本格的なスイーツを作るパティシエ。昨年お店をオープンした日本橋に愛着を感じており、もっと街に入り込んだ活動をしたいという思いを持っていました。
その思いに応えるように、三四四会のメンバーは何度も打ち合わせの場を設け、小山さんたちが三四四会を知り、街と繋がっていくきっかけを提供。両者は「老舗と新店、チャネルの異なる同士だからこそ広がる可能性があるし、それが街への貢献にもつながる」という共通の考えをもち、議論の末にたどりついたのがこのサブレという形でした。

そして「ゆくゆくは街を代表するおみやげに育てていきたい(三四四会・寳井さん)」という思いを反映し、商品名はストレートに『日本橋さぶれ』となりました。

※商品の方向性が決まるまでの詳細はこちらの記事を参照ください。
https://www.bridgine.com/2022/12/14/tsunagift2023_team_a_1/

3種のサブレそれぞれの味へのこだわりにもご注目ください。サブレというフランスの洋菓子を土台に、日本橋の食のエッセンスが乗せられた、新しいサブレの誕生です。

■うなぎ
老舗の名店が軒を連ね、日本橋の食を代表するうなぎ。そのうなぎパウダーと、香ばしさを出すフランス産のブラウンシュガーを併せて生地に練り込みました。バターはコクのある発酵バターを使用し、ゲランドの塩で味のエッジも効いています。見た目はプレーンで食べやすいですが、うなぎのパワーで元気が出るかも?

■すき焼き
Hiromi & Co.のすぐそばにある老舗すき焼き店・伊勢重の牛佃煮を粉末にしたものをブレンド。パティシエの小山さんもファンだという甘じょっぱい味が、食べるとあとから追いかけてきます。アーモンドも一緒に練り込まれ、香ばしいマリアージュが楽しめます。

■蕎麦
日本橋の定番、蕎麦はサブレと相性ぴったり。小山さんの実家である蕎麦店とも連携し、香り高い国産の蕎麦の実をたっぷり入れました。つぶつぶした食感が特徴です。

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もともとHiromi & Co.のファンだった高嶋家の若女将・和佳子さんはこのプロジェクトを通じて小山さんとの距離がさらに近くなったそう(画像提供:Hiromi & Co.)

伝統を尊重しつつ、新しい。日本橋を体現するパッケージ

パッケージにおいても、入稿直前まで検討と改善を繰り返したTEAM A。
デザイナーであるHiromi & Co.の浅井さんと三四四会のメンバー、そしてつなぎふと全体のアートディレクターが密に議論を交わしながら、3種の個性あるパッケージが完成しました。

「三四四会が持つ伝統や安心感というイメージに加え、Hiromi & Co.の新しさや若い層のお客様の好みも反映したデザインにしたい。どちらの店頭に置いてあっても馴染むような、シンプルかつモダンな印象にできたら」と語る浅井さんに対し、

「僕らはデザインに関して素人というのもあるけれど、三四四会のこれまでの発想を超えるようなものにしたいから、全面的にHiromi & Co.の意向を尊重したい。老舗の関わる商品がこんなにオシャレに!というお客様の反応を期待している」
と返した三四四会の寳井さん。

伝統と新しさ。両者の融合をはかるべくデザインされたモチーフは、二つの円が重なってできた、だるまのような柔らかい形となりました。この形はサブレの型にも採用され、手にとって食べやすいフォルムに。

さらにこのパッケージには七宝柄のモチーフが添えられています。円形が永遠に連鎖し繋がるこの柄は、円満、調和、ご縁などの願いが込められた縁起の良い柄。

「“人の御縁や繋がりは、七宝と同等の価値がある”という事を示している、昔ながらの柄です。このチームにふさわしいメッセージでもありますし、日本橋の街の人の繋がりにも共通することだと思います。伝統と新しさのどちらも同居させるということも含めて、この商品は今の日本橋の街そのものを体現しているのではないでしょうか」
とアートディレクターの李さんが語ると、皆深くうなずいていました。

最後に浅井さんによって和にも洋にも馴染む明るい色味に調整され、さまざまな思いの詰まったパッケージが完成。気軽に試すシーン、贈答用にセットで渡すシーンを考慮し、バラ売りと3個セット両方で販売できるようにしたのも、徹底してお客さんに寄り添うこのチームならではです。

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次は“ガリ”味の商品が出るかも?

『日本橋さぶれ』の販売に際し、三四四会にはひとつの展望がありました。
「今回の第一弾はうなぎ・すき焼き・蕎麦だけれど、三四四会のお店はまだまだたくさんのジャンルがある。だからサブレを媒体にして、どんどんシリーズ化していきたいんです。洋食とか、中華とか、こんなものまでサブレに!?みたいな驚きのあるものも作っていけたら」
と語った寳井さん。

実際、開発過程では寿司を表現すべく“ガリ”味のサブレも試作されており、その意外な美味しさにチームメンバー皆が驚いていました。今回は残念ながら発売には至りませんでしたが、いつかガリのようなユニークな第二弾商品が登場するかも?「こんな日本橋の味をサブレにしてほしい!」というリクエストがありましたら、ぜひBridgineにお寄せください。

今後の展開も楽しみな『日本橋さぶれ』は3月より開催されるSAKURA FES NIHONBASHIでお披露目されます。同時にHiromi & Co.と蛇の市の店頭でも販売開始となりますので、ぜひTEAM Aの温かい雰囲気を感じに、お店にも足を運んでくださいね。

構成・文:丑田美奈子(Konel) 撮影:前川裕介

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