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2024.04.04

好奇心から関係を紡ぐ。+NARU NIHONBASHIが体現する、街のオープンスペース像とは?(後編)

好奇心から関係を紡ぐ。+NARU NIHONBASHIが体現する、街のオープンスペース像とは?(後編)

2023年7月に開業し、“好奇心で動き出す、日本橋のオープンスペース”をテーマに、連日多くの人々が利用する話題のスポットとなっている「+NARU NIHONBASHI(以下、+NARU)」。日々さまざまなイベントが開かれ人々の交流の場となっている同施設は、そのユニークな運営スタイルによって街のコミュニティ形成の新たな起点となっています。後編では、三井不動産株式会社・日本橋街づくり推進部の北村聡さん、株式会社 Goldilocks代表の川路武さん、+NARUスタッフのダバンテス・ジャンウィルさんに、+NARUの象徴とも言える「イベント」について深掘りしながら、この場所を通して日本橋に描く未来について話していただきました。

※今回は「まちの編集部員」メンバーをインタビュアーに迎え、Bridgine編集部チームとして複数名で取材を実施。新たなインタビューのスタイルに挑戦しました。

ー+NARUの大きな特徴は、頻繁に開催されているさまざまなイベントかと思いますが、皆さんが印象に残っているイベントはありますか?

ダバンテス:僕が特に印象的だったのは「ゆるゆる茶会」です。もともと僕が開いたイベントの参加者にお茶が好きな方がお二人いたのでおつなぎしたのですが、その二人が企画して実現したイベントでした。結果、このイベントは定員を超える大盛況で。後日企画したお一人と話をしたところ「今まで自分は一人が好きなんだと思っていたけれど、誰かと一緒に何かをすることってこんなに楽しいんだ!と初めて知りました。」と言われ、すごく嬉しかったですね。

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+NARUでは多種多様なイベントが開催されている。コミュニティマネージャーが企画するものと、会員が自主的に企画するものが混在しているのも大きな特徴(+NARUウェブサイトより)

北村:「ゆるゆる茶会」は+NARUとしてのターニングポイントにもなったイベントの一つです。日々たくさんのイベントをやる中で、オープンから2ヶ月後の昨年9月に、+NARU企画のイベントと、会員の皆さんが企画するイベントの数が逆転したんです。この時期に開催された会員企画の「ゆるゆる茶会」は、びっくりするくらい集客があり、+NARUのコミュニティ作りが自立回転し始めた象徴的なイベントでした。

川路:僕は「詳しくない趣味をシャベル会」という+NARUの人気イベントに注目しています。趣味ってどこか言いづらさもあって、気軽に誰かと話す機会が意外と少ないんですよね。でも“好きなことを話す”ってすごく幸せなことで、話すと脳からオキシトシンという幸福ホルモンが出るらしいんですよ。先ほどウェルビーイングという言葉もありましたが、好きなことを話すと健康になるんです。

「詳しくない趣味をシャベル会」がいつも盛況なのは、そういう機会が求められているからだと思いますし、+NARUで楽しそうに趣味の話をしている人がいるのは、僕らも見ていて嬉しいですね。

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「詳しくない趣味をシャベル会」は過去に9回も開催された(画像:Goldilocks noteより)

イベント成功の秘訣は、“やりたい”に伴走すること

ー私自身(斎藤さん)もこれまで+NARUのイベントに何回か参加しているのですが、ユニークな切り口のイベントにいつも感心します。アイデアはどうやって出しているのでしょうか?

ダバンテス:僕の場合、イベントのアイデアは雑談から生まれることが多いですね。川路さんと会話したあとの帰りの電車でふと「あ、あの話はこの前のアイデアとつなげられるかも!」みたいなひらめきがよくあります。最初はイベントの告知文を書くのも一苦労でしたが、トライアンドエラーを繰り返して今はもうイベント企画が体に染み付いてます(笑)。

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今回「まちの編集部員」としてインタビューに参加した斎藤さん。自身も参加した経験から、+NARUのイベントの内側に興味があったとのこと

ー企画会議はあるのでしょうか?

ダバンテス:一応あるんですが、それよりも自然発生的に生まれるケースがほとんどです。パっと思いついてその場で他のメンバーに相談に乗ってもらって即実行!みたいな流れですね。やるやらないの判断は、組織としてと言うよりも各コミュニティマネージャーの裁量に任されています。もちろんボツになる企画もありますが、「そんなこともあるよね」という感じで咎められることもないので、プレッシャーもなくどんどん企画しています。

ー+NARUの特徴でもある、会員が主体になるイベントについても聞かせてください。会員のやりたいことをサポートする際に心がけていることはありますか?

ダバンテス:会員さんのタイプも見極めたうえで、僕はわりと実行をその場で後押しするような声をかけるようにしています。たとえばVtuberの方の公開収録イベントは、ご本人から構想を聞いたその日にイベントの日程を決めました。話しながらカレンダーを開いて、「じゃあいつやります?」って聞いて (笑)。「やばい、やるって言っちゃった!」という状況を作り出すことは実現するためのポイントかもしれません。

またもう一つ心がけているのは、会員さんのやりたいことを尊重しながらも、必要な軌道修正やフォローはすること。会員さんのためにも、+NARUとして良いイベントにするためにも、伴走するスタンスでいます。

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画像提供:+NARU

川路:イベントって、大変ですよね...。親友のために誕生日会を開くとか、飲み会の幹事をやるだけでも大変なのに、わざわざテーマを決めて、集客をしてイベントをやるなんてすごいことだと思うんです。何か新しいイベントを立ち上げて告知をしてお金を取るのはどこか新規事業の立ち上げにも似ていて、やったことない人にとってはすごくドキドキする経験なんですよね。そこを忘れずに、会員さんのやりたいことに寄り添っていきたいと思っています。

「+NARUがあるから日本橋に行きたい」と思われる、共創の起点へ

ー日本橋において+NARUは今後どういう存在になっていきたいですか?

北村:市民共創による街づくりの拠点です。たとえば「昔の日本橋を歩いてみたい」という街の人の思いに対して、学生から教授までさまざまな有志が集まってメタバースを使った街歩きのプロジェクトが進められているのですが、そういう新しいアイデアが街にひろがるきっかけとしても、リビングラボの役割を果たしていきたいですね。

川路:市民共創で何をするのかはポイントですよね。成熟した日本橋では課題が見つかりにくいという話もありましたが、たとえば「詳しくない趣味をシャベル会」に人がたくさん集まるのは、逆の捉え方をすると“趣味をしゃべれる場所がない”という課題の裏返しなんです。何かのイベントに夢中になっている人がいたらそれはニーズだし、何かを手伝いたい人がいたら手伝える場がなかったんだということ。そういう場を市民共創で作っていくことが重要だと思います。

北村:そうですね。課題って、一つの整理として個人・街・東京・国と4つのレイヤーに分かれると思うんですが、個人の課題は街の課題に染み出していく。たとえばウォーカブルシティや界隈性は個人の課題であり街の課題にもなっていくというように、ボトムアップの課題解決は+NARUが貢献しやすい部分ですね。

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Bridgine編集部の新井さん(三井不動産株式会社)

ー今後日本橋でチャレンジしたいことはありますか?

ダバンテス:僕はあえて苦手なことにチャレンジする場を作ってみたいと思っています。実は文章を書くのが苦手なんですが、そこを克服しようと「NARU文芸部」というイベントを開催しました。苦手なことがあったら誰かを誘って部活にしてしまえば良いんだ!という気づきが得られたので、これを仕組み化して応用できたら良いなと思っています。

北村:僕は「会社を超えた新入社員歓迎会」をやってみたくて、今まさに企画しています。日本橋は川沿いの再開発で今後さらに働く人は増えていくと思うので、その人たちのウェルビーイングには注力していきたい。僕自身、前職の時は街に入り込むことに二の足を踏んでいた部分もあるからこそ、会社という枠から出て街でつながるきっかけ作りはしていきたいですね。

川路:コロナ禍を経てハイブリッドワークが浸透しわざわざ出社する意味が問われるようになりましたが、+NARUのイベントをめがけて「今日の夜は日本橋であのイベントがあるから」と出社を楽しみにする人が増えたら良いなと思っています。その意味では、日本橋に出社してほしい企業と+NARUがコラボするのも良さそうです。

あとは企業の部活ともコラボしてみたいです。部活のための施設を持っている企業は少ないので、企業と+NARUが提携して活動する場所を提供することができたら良いなと。そしていつか複数の企業のクイズ研究会がここでクイズ大会をやって対決する、みたいに発展していったら面白いですね。

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街でのつながりが増えて、ヨッ!と挨拶をする「ヨッ友」が増えると良いねという話で盛り上がる一幕も

〜まちの編集部員との合同取材を終えて〜

今回の取材は2023年12月に実施された「まちの編集部員になろう」というイベントを経た、新しいインタビューの形の実験を兼ねて実施されました。
※関連記事:5年目のBridgineは「街に開かれたメディア」へ。多様なメンバーと未来の街メディアを語り合う。 〜『まちの編集部員になろう vol.0』リポート

今回「まちの編集部員」としてインタビュアーを担当された斎藤さんのコメント

「+NARUの運営メンバーの想いをじっくり伺えて良かったです。元々、MICEやエリアマネジメントへの関心から運営の裏側に興味がありましたが、今回、将来の展望やこだわりなどを聞くことで、+NARUの活動が一層壮大なものに感じられました。“まちの編集部員”として参加するなかで印象的だったのは、編集部メンバーが各々の視点で質問することで、一問一答ではなく自然な会話のような取材になり、コミュニケーションが深まっていたことでした。また取材の機会があればぜひ参加してみたいです。」

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Bridgineでは今後もさまざまな取材やコミュニケーションの形にチャレンジしながら、日本橋の街に開かれたメディアを目指していきます。どうぞお楽しみに。

取材:Bridgine編集部  文:丑田美奈子  撮影:岡村大輔

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