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2022.03.14

かつお節だしの魅力をアイスが引き出した、ユニークで上品な3種のフレーバー 【つなぎふと TEAM C】「だしアイス 〜おだしのおめかし〜」商品紹介

かつお節だしの魅力をアイスが引き出した、ユニークで上品な3種のフレーバー 【つなぎふと TEAM C】「だしアイス 〜おだしのおめかし〜」商品紹介

日本橋の食プレイヤー2組と、日本橋にゆかりのあるクリエイターの3者によるコラボレーションで、街の新しい食みやげをつくるプロジェクト「つなぎふと」。にんべん、青果ミコト屋、Konelが参加するTEAM Cのコラボレーションでは、かつお節だしの魅力を青果店がアイスという形で表現した、今までにないおみやげが完成しました。 本記事では、おみやげづくりのプロセスを振り返りながら、商品の魅力に迫ります。

鰹節の新たな可能性を引き出すには?

鰹節。きっとどの家庭の台所にもあって、和食を作るうえでは欠かせないものー。そんな定番の食材を扱い、和食文化を牽引する日本橋の老舗・にんべん。そのにんべんに事務局メンバーが「日本橋のあたらしい食みやげを一緒に作っていただけないか?」と打診をしたところから、Cチームのおみやげ作りはスタートしました。「日本橋の食文化をコラボレーションという形でアップデートする試みは興味深い」と同社代表の髙津伊兵衛さんにも快諾いただき、同社の参加が決定。にんべんの鰹節関連商品を軸に、商品開発を進めることになりました。

しかし、にんべんはこれまでも数多くのコラボレーションの実績がある、日本橋を代表する企業。普通のコラボの切り口ではなく、新たな視点をにんべん側にももたらすようなお相手でなければ……。そんな思いから事務局が声をかけたのが、今回唯一日本橋の“外”から参加した、青果ミコト屋でした。青果店を運営する傍ら、規格外野菜などのロス食材を使ったアイスの製造販売も行う彼らは、素材を組み合わせてユニークなフレーバーのアイスを作るのが得意。ミコト屋ならきっと今までにない切り口で鰹節の新たな可能性を引き出してくれるはず、と参加いただくことになったのです。
日本橋を知り尽くした老舗と、横浜市青葉区に拠点を置きながら、日本中の生産者とのつながりを持つ青果ミコト屋。異なる視点が合わさった時に起きるであろう化学反応が、このチームのポイントでした。

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お互いの取り組みやビジョンを共有するのも大切な時間

試行錯誤から生まれた、3つの驚きのフレーバー

どうしたら食べた人に“鰹節の新たな可能性”を感じてもらえるのか?
その答えは、ミコト屋の試作品を食べることでだんだんと見えていきました。

試作にあたり、ミコト屋がその素材としてにんべんにリクエストしたのは、「つゆの素」「鰹節」のほか、生産過程で出る「だしがら」やお惣菜として人気の「かつお生姜」「だし巻き玉子」にまで至りました。
ここまで幅広い素材を試す理由について、ミコト屋代表の鈴木鉄平さんは「にんべんさんは、だしがらをふりかけにして商品化するなど“捨てるところがない”と言われる鰹節のサステナビリティを体現していたり、お惣菜でだしの楽しみ方を提案するなど、ストーリーがたくさんある。僕らはそういうストーリーもアイスに乗せていきたいんです」と語っていました。

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さまざまなフレーバーのアイデアから候補を絞っていくにんべん広報・小幡さん

そして、何度も試作を繰り返して辿り着いたのは、以下の3種。
それぞれの個性溢れるフレーバーを紹介します。

① 「だし、すだち、かつお生姜」
チームの皆が一番驚いたのがこのフレーバー。「コース料理を食べているように、次々に味が変わっていく」と表現していたのはにんべん広報の中村拓美さん。だしの風味を追いかけるように、爽やかなすだちの香りや生姜のシャキッとした食感が感じられるシャーベット状のフレーバーです。にんべんのお弁当の定番おかず・かつお生姜の活用方法に「アイス作りは料理」と言うミコト屋のアイデアが詰まった一品となりました。

② 「つゆの素キャラメル&だしがらクッキー」
満場一致で採用が決まった一品。みたらしのようなキャラメルソースとともに、だしがらをシート状に伸ばしてオーブンで焼いた香ばしいクッキーが練りこまれています。「これは誰もが好きな味ですよね。だしがらクッキーでにんべんさんのサステナブルなマインドを表現しました」とミコト屋・鈴木さん。

③ 「だし巻き玉子」
もっとも試行錯誤が続いたのがこの「だし巻き玉子」。卵の風味をいかに立たせるか、卵焼きの“焼いた”香ばしさをどうやって出すかなど、製法や材料・配分を何度も調整して、納得のいく味に仕上がりました。口に入れて少しすると「あ、たしかにだし巻き玉子だ!」と感じられる、楽しいフレーバーです。

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こうして3種のアイスそれぞれに、料理としてのだしアイス/サステナビリティ/お惣菜で活きるだし、というストーリーがもたらされ、新たな鰹節の可能性を感じさせる商品ができあがりました。

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試食は毎回笑顔がこぼれる時間

だしに“おめかし”させて、幅広い魅力を感じてほしい

この流れを受けて、Cチームのファシリテーター・Konelのメンバーが重視したのも、“商品のストーリーを伝えること”でした。
このプロジェクトに向けてミコト屋・にんべん双方の著書を読んで構想を膨らませていたKonelプロデューサーの加藤なつみさんは、「どちらのプレイヤーにも、強いビジョンとこだわりがある。それを食べる人に届けることが今回のデザインの役割」と意気込みます。

デザインの入口として商品名は大事なポイント。
アイスは3種セットで販売するスタイルになりましたが、この商品の特徴は“鰹節をさまざまな表現でアイスにすることで、いつもの鰹節の新たな魅力に触れられること”です。「それってまるでお気に入りの洋服に着替えて魅力が増す“おめかし”のようだね」というアイデアから、「だしアイス〜おだしのおめかし」という商品名を提案したところ、TeamCのメンバー皆も共感。親しみやすさと上品さを併せ持つ商品名に決まりました。

ギリギリまで検証を繰り返した、パッケージの表現

商品名が決まったところで、次はいかにパッケージからストーリーを滲ませるか?
ここがTeamCの大きな難関にもなりました。

なぜならアイスは冷凍商品のため保冷・形状などの考慮が必要でパッケージの制約が大きく、表現の幅が狭くなりがちだからです。しかし、加藤さんとデザイナーのAditさんは無難なデザインにまとめることはしませんでした。
「鰹節をそのまま持っているようなパッケージにしたら遊び心があって面白いんじゃないか?」「鰹節とアイスを融合させたキャラクターがいたらかわいいかも」「日本橋の落ち着いた雰囲気と今っぽさが同居するようにしたい」などなど、あらゆる表現の可能性を試していきました。

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デザインアイデアの数々。これ以外にもたくさんの候補が(画像提供:Konel)

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プレゼンにも力が入るAditさん

その熱意が伝わったのか、企画ミーティングではにんべん・ミコト屋のメンバー全員で、デザインの細部に至るまで活発な議論がなされました。そして皆が納得する形に仕上がったのがこちらです。

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また、「アイスを食べながら読んでもらい、にんべんとミコト屋の思いを知ってもらいたい」と“お品書き”を添えたのもこのチームのポイント。作り手のストーリーを食べる人に届けよう、というファシリテーターの思いも形にすることができました。

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そのほか冷凍に耐えるための素材検討、包装のシミュレーション、デザイン調整などがギリギリまで続き、入稿締め切りまであと1時間(!)というところまで粘った、こだわりの詰まったパッケージの完成です。

限定販売のその先へ

SAKURA FES NIHONABSHI 2022でお披露目される今回のおみやげ。実はチームの中ではその後の話も検討されました。「にんべんでは“日本橋だし場 はなれ”というレストランもやっているので、そこのデザートとして提供するのも良さそうだね」と、にんべん・髙津さん。ミコト屋・鈴木さんも「これはうちのお店でもきっと人気商品になりそう」と今後に期待を寄せたうえで、「いろいろなお相手と共創する取り組みをしてきたけれど、今回はとても学びが多かった」とコメントをくださいました。今後の展開に期待が膨らみます。

TeamCの3者が思いをひとつにし、文字通りつながることで生まれた“つなぎふと”、「おだしのおめかし」。そのひとさじに和食の要・鰹節の新たな可能性を感じながら、にんべん・ミコト屋・Konelのストーリーに思いを馳せていただけたら幸いです。
つなぎふとの販売開始は3月18日。桜の開花とともに、美味しい春をお届けします。

構成・文:丑田美奈子(Konel) 撮影:岡村大輔

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